コラム
草履に編み込まれた“メリヤスパーツの物語”:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
江東区の町工場、小高莫大小工業が余った布から作った草履。入荷後すぐに売り切れるその秘密は、青森県の職人たちとコラボして製作した過程を物語で伝えるマーケティングにあった。
やりとりを伝えよう
「『ブログを毎日書けば人生が変わるぞ』と言われたんです」
Tシャツで有名な久米繊維工業の久米信行社長の講演会に行った時のこと、その懇談会でそう命じられたという。それまでは「ごぶさたしてます」で書き出す“月イチ症候群”に陥っていたブログ。「仕方ない」と本腰を入れると、得意先からも反響があった。そこから足かけ4年、今やおばあちゃん職人に取材をして“物語を書ける社長”に大変身した。
「いくらいいものを作っても、それだけでは伝わらないし、売れない。やりとりを物語にすることが大事だ」
『仕事はストーリーで動かそう』(川上徹也著)に出会い、「価格や品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りない」と考え、ストーリーブランディングで売ることにした。商品開発の苦労や生産現場のことを伝えれば、ブランドが育つだろうと思った。
自社サイトで、自分たちの商品について語れている会社は、実は少ない。ショッピングモールに出店、商品紹介はメーカー文のコピー、SEO対策。それでは数多ある商品の中に埋もれてしまう。消費者の心には響かないので、価格だけ比較されてしまう。
衣料品の純国産率は今や何と1%(数量ベース)。レナウンでさえ中国企業に買収されるような厳しい業界で、小高莫大小工業は生き残っている。それは、リブというパーツがつながりを生むから。人と人をパーツがつなぎ、そこから商品が生まれれば、物語をつづることができ、顧客の心を響かせられるのだ。
※編集部より:記事内容に一部誤りがあったため、初出から修正しました。読者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしました。(9/2 22:00)
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