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コラム

増える“ゲームっぽいコンテンツ”――ゲームの再定義競争野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(1/3 ページ)

ゲームビジネスは市場拡大しているものの、楽観ムードではなく、この先の不透明感がぬぐえない。ソーシャルゲームのように万人受けするライト化がさらにすすむのか、あるいはコアユーザーを満足させる進化が求められるのか。市場変化を自社に有利に誘導する「ゲームの再定義」競争が世界的に展開されるなか、日本企業はどう動くべきなのだろうか。

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「野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン」とは?

ゲームは単なる娯楽という1ジャンルを超えて、今や私たちの生活全般に広がりつつある。このコラムでは、ソーシャルゲームや携帯電話のゲームアプリなど、すそ野が広がりつつあるゲームコンテンツのビジネスモデルについて、学術的な背景をもとに解説していく。


 9月16日から4日間、今年も東京ゲームショウが開かれた。筆者の目を引いたのは、コントローラなしにプレイヤーの動きを察知するXBOX360の新デバイスKinectである。Wiiでは新型コントローラで直感的なプレイが可能になったと言われたが、今度はそのコントローラすら不要になる。リズムに合わせてダンスをすると、自分の姿がゲーム画面に取り込まれるゲーム(DanceEvolution)などがある。

 KinectであれiPadであれ、直感的操作のデバイスは、ゲームに不慣れなカジュアルユーザーにアピールし、市場拡大の起爆剤となる。しかし、カジュアルユーザーへの訴求というハードウエアの可能性とは逆に、ゲームショウに展示されるゲームソフトの多くがコアユーザー向けであったことが、対照的であった。

 ゲームショウの楽しみは、発売予定のタイトルを試遊できることにある。開発進捗度が発表され、発売日までワクワクして待つのである。だが、発売日まで待ってくれるのは、ゲームプレイが生活の一部になっているコアユーザーだけである。そもそもゲームプレイを目的としないカジュアルユーザーに対しては、別のアプローチが必要だ。

 ゲームショウにあわせて行われたカンファレンス「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット(参照リンク)」では、まさにカジュアル市場が議論の的となった。その中でスクウェア・エニックスの和田洋一社長が指摘したように、旧来のゲーム市場統計では捕捉できない“ゲームっぽいコンテンツ”が増えている。


スクウェア・エニックスの和田洋一社長

 ゲーム開発者の考える旧来の品質水準をクリアしない「ゲームとは言えないがゲームっぽい」新サービスが現れ、ユーザー自身も「自分がゲーマーだ」という自覚もなくプレイする。このコラムで述べてきたソーシャルゲームはその典型である。

 “ゲームっぽいコンテンツ”を含めると、確実にユーザーは拡大し、市場は成長している。それにも関わらず成長が実感できないのは、既存路線上の量的な拡大ではなく、「ゲームとは何か」という定義に関わる質的変化が起こっており、将来が予測不能になっているからである。

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