環境ビジネスは本当に成長分野なのか(2/2 ページ)
「環境ビジネスは今後の日本の成長の柱」とよく言われるが、本当にそうだろうか。マクロの視点での安易な議論にあおられて、多くのしかばねが残される結果となりはしないだろうか。そんな予兆になりそうな日本政策投資銀行の調査結果を紹介する。
自社だけの都合で考えない
こうした事態に陥ってしまうのは、新規事業の参入の基準がどの企業も画一的でかつ静的であるからと思われる。
たいていの企業が新規事業の参入の基準として掲げるのが、ある程度の市場規模がある、行政やマスコミなどの権威や他社が有望市場としてにらんでいる、早期に黒字化できるといったものである。これでは、有望市場は誰もが思いつく限られたものになってしまう。
それなのに、事業計画策定時はたいていが現在のプレーヤーだけを見て、参入余地があると判断してしまう。人間は物事を自分の都合よく、あるいは、自分が他者より優れており、敵やライバルが劣っていると考える傾向がある。
例えば、米国のものではあるが、ある調査では1万人の高校生の内、76%が「自身のリーダーシップは平均以上」と答え、「平均以下」と答えたのは2%に過ぎなかった。60%の人間が「自身が仲間内で10%のランクに位置している」、25%が「トップの1%に入る」と考えていた(出所:『Discover YourInner Economist』Tyler Cowen著)。新規事業の見通しを当事者が甘く見てしまうのは、こうしたバイアスが同様に働いていることが考えられる。
新規事業を考える際には、自分だけがその市場に着目していると考えるのではなく、今の市場プレーヤーだけでなく、日本企業、いや世界の企業の3分の1がその市場への参入を考えていると想定し、その中で、自社がそのビジネスを手がける必然性はあるのか、一強百弱の一強になれるストーリーが描けるか、そのストーリーで置かれた前提は正しいのかということを考えなければならない。そのチェックに耐えたものでも、千三つの確率でしか成功しない。それがベンチャーというものだ。
環境経営、敬資源、敬エネルギーは確かにこれからの経営では不可欠な概念だ。ただ、それは有望市場だからということではなく、もっと企業としてのインフラ、考え方として当たり前に持つべきものであって、環境ビジネスを成長の柱とするには、新しい需要を創出するもう1つ別の価値提案、イノベーションが必要だ。(中ノ森清訓)
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