戦略転換は進化なのか? ライトオンとしまむらに学ぶ一貫性の重要さ(2/2 ページ)
再三のNB化への転換で利益増をもくろむライトオン。それに対し、「餅は餅屋」と仕入れに徹底し、SPAとの差別化を測るしまむら。この両社の戦略とその結果の違いは何を意味しているのだろうか?
一貫性を守る大切さ
こうした話題を聞くたびに、事業運営の基本的な2つのことを考えてしまう。
その1つは、顧客への貢献が見えない戦略転換にはまったく意味がないということ。
ライトオン社内には、我々の計り知れない戦略転換に走らざるを得ない、やむにやまれぬ事情がきっとあるのだろう。しかし、SPA化を進めるがあまり、ニーズの細分化に対応できなくなったり、少品種大量生産ゆえの在庫過多になったりという流れは容易に想像がつく。さらに、発表された次年度の戦略には、具体的な顧客貢献の内容は見えてこない。「またその話か」と思うのは私だけではあるまい。自社側の都合のみによる戦略転換がいかに不毛かということだ。
しかも、これはアパレル小売だけの世界ではない。メーカーにも通じる話だ。SPA化とNB化の間をいったりきたりするのは、メーカーからすれば開発の内製化とアウトソーシングの戦略転換、販売における代理店戦略とダイレクトセールスの戦略選択に通じるものがあるだろう。そこに顧客貢献の視点がない限り、こうした戦略転換がうまくいくことはない。
2つめは、どのような企業でも全体ネットワークとしてのバリューチェーンをうまく活用することなしに事業成功の道はないということ。
極端な垂直統合型のネットワークを作り上げ、スタンダードにしてしまった企業もなくはないが、数年に1社出るかどうかの確率でしかなく、大半の企業は、全体バリューチェーンの中で存在している。結局は自分自身の身のほどを知り、(自分たちの得意なことの)徹底的なサービスを地道に行う以外に業績向上の道は少ないということだ。
自社が関わる商流の中で、他社の領域が魅力的に映るのは無理のないことかもしれないが、戦略転換スピードと業態変化がもてはやされる時代にあっても、一貫性を守りとおさなければならないことも多い。(猪口真)
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