「努力は報われる」という教育が日本をダメにする(2/2 ページ)
うつ病や自殺未遂のカウンセリングを始めて15年が経つという筆者。「努力」というイメージの持つ功罪について、うつ状態の人も、うつ状態の部下がいる上司の方にも、そして家族の方々にも考えてほしいと主張する。
「努力は報われない」、でも「報われた時には努力をしている」
努力がすべて報われるわけではないことは、誰しも知っていることです。冷静になって、客観的に考えれば分かっているはずです。
そこでカウンセリングの時にお伝えしている大切なフレーズ。
人が評価される時、幸せを感じる時、それはその直前まで有意識・無意識関係なく「努力をしている」という事実がある。評価できる「努力」をしてきたのかは、結果が決めるものです。
なので、日ごろの自分自身の行動を考える時に気を付けておきたいこと。それは「成功」や「達成」に一番必要なものは「努力」ではなく、成功に至るプロセスや達成に至るプロセス。そして、成功や達成ができた人は結果として「努力」を怠らなかったという事実なのです。
「努力をする」=「報われる」ではなく、「報われた人」=「努力をしてきた人」ということをもっと強く考える必要があるかもしれません。
部下のうつ状態に直面したら
重要なことは、部下が何を「努力をしていること」と認識しているのかを知るということです。そして、今管理している部門では、何を「努力すべきもの」として評価しているのかを正しく伝えるということです。これは部署内の全ての社員に対して共通のテーマでなければなりません。
そして、部下から、できないと思われても構いません。それは「うつ」とは疾病の1つではあるのですが、身体の疾患とは異なり個人差があり、心理カウンセラーですら対処できていないものですので、一般的なうつ状態に関する研修を受けたところですぐに理解できるものではないからです。
部下がうつになっていても、正しいコミュニケーションさえあれば勤務は続けられますし、休職となっても、会社側に問題はないものとされます。これも、部下への対応を上司の努力に依存するのではなく、組織運営プロセスとして管理していくべきという考え方に基づくものです。
努力は報われるべきものです
努力は報われるべきだと思います。気持ちの大部分を使い、時間の大部分を使って仕事や生活に自分自身を投下していくわけですから、報われないという状態は本当にさみしいものです。
しかし、努力だけで結果がなければ、受験も就職活動も、仕事の成果も業績も得られずに、本当に自分の欲しいものは手に入らないのです。
なので考えておくべきこと。「努力をする」=「報われる」ではなく、「報われた人」=「努力をしてきた人」であるということです。(荒川大)
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