ゲゲゲの水木しげる先生から学んだキャリア観――「時機を待て」(2/2 ページ)
「スピード経営」「ドッグイヤー・インセクトイヤー」というように、経営スピードが何より重視される現代。ところがそんな風潮の真逆にあるキャリア観について、「ゲゲゲの女房」の主役となった水木しげる先生の姿勢から学びたい。
どん底時代の心構え
大学生や大学院生のように、社会人経験のない人たちと面談していると、「頑張りました」とアピールされることが多いのですが、ビジネスをしていると、頑張っただけでは評価されないのは普通です。頑張らなくとも結果を出せば評価されるしチヤホヤしてもらえます。問題は頑張っても評価されない時のモチベーションであり、心構えなんです。
水木しげる先生が極貧のどん底時代、「時機を待て」と言い、紙に書いて家の中に張り出します。でも待てずについ、妥協をしてしまう弱さも人間のサガ。もちろん水木先生はそのどん底を耐え抜いたからこそ、今の栄光があるのでしょうが、それでもドラマの中でそうした人間らしさを見せています。
ゲゲゲの女房である松下奈緒さんを養うため、不本意な金稼ぎにマンガを書くのです。私は水木先生が不本意な少女マンガを書いて、小銭を稼ぐシーンにはとても感動しました。やはり人間なんです。弱いんです。
しかし水木先生はそのまま弱さに流されなかった。これこそ大成功を勝ち取ることができたアーティストとしての地力だったのではないでしょうか。仕事がうまく行かない時、あせるな、と言われても目の前にある生活は待ってくれません。息を吸うだけでは生きていけないのが人間です。
しかしそんな人間の弱さを認めた上で、それでも待てること。これは長期的な視野からは、絶対に大切なことといえます。
戦略家ベイジル・リデル=ハートの戦争の原則において、「敵が防御を固めている時は攻撃しない」原則があります。時機を待つのは戦略思考なのです。そして攻撃は「敵の最小抵抗点を狙う」のです。時機を待っているのはこの敵の「最少抵抗点」を見付けるための、実は積極的な攻撃の一部と言えるのではないでしょうか。
キャリアという人生を通じて作られる歴史では、不遇な時も飛翔を迎えるための大切な熟成期間なのではないでしょうか。うまく行っていない人、時機を待ちましょう、積極的に。(増沢隆太)
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