社内政治に絶対負けない法(2/2 ページ)
組織の中で「正論」を通すためには、優秀な人ほど「論理思考で武装しよう」と考えがちです。でも、それでうまくいきますか? 筆者は、より重要なのは「社内政治に負けない力」だと主張します。
「情報のアービトラージ」が政治力の源泉になる
例えば、政治力を持つための一番基本的な材料って何だと思いますか?
答えは「情報」。つまり、社内の各部署で「誰が何をしているのか」を知ることが、政治力の源泉になるのです。
例えば、それは「今度マーケティング部で、顧客の聞き取り調査をやるらしいよ」という、それ自体はごくありふれた情報でも良いんです。その情報を営業に持っていけば、「あ、じゃあ、オレの担当する顧客には良い回答をしてもらえるよう、今から仕込んどこう」となり、営業担当者にとっては価値ある情報に変わります。
あるいは、商品開発部門に同じ情報を持っていっても良いですね。今度は「それって、本来はウチの部署がやる仕事のはず。ひと言クギを差しておかないと、ウチの存在意義が薄れちゃう」と、また有益な情報になります。
それはあたかも、金融市場において微妙な価格の違いでもうけるようなもの。ほら、あるでしょう? 同じ商品でも日米で微妙に価格差があって、売買によって利ざやを稼ぐ手法が。これにならって、社内で分散している(偏在している)情報をトレードすることを仮に「情報のアービトラージ」と呼びましょう。
先ほどの例で見た通り、情報のアービトラージが上手にできる人は頼りにされ、やがては影響力を発揮できます。すなわち、情報のアービトラージこそが政治力の源泉なのです。
社内政治に負けないための逆説的な方法論
……というのが、表の話。そして、ここからが裏の話。
社内政治がアリかナシかと言ったら、それはもう圧倒的にない方が良いんですね。「必要悪」の「悪」の部分に力点を置いて考えれば、組織文化を腐らせる社内政治は絶対悪です。
でも、だからといって目を背けては、社内政治をなくすことはできません。だって、あなたの周りにもいますよね? 人が知らないのをいいことに、情報のアービトラージなどのさまざまな手練手管を使って、自分の利益のために政治力を発揮するクソ(失礼!)みたいな人間が。
そういう人間に対抗するためには、こちらも社内政治のテクニックを知らなければいけないんです。ナイーブに「社内政治なんてキライだ!」と言っているだけでは、クソみたいな人間にカモにされてしまうだけなんです。
だってそうでしょ? 「情報のアービトラージ」というコンセプトを1つ知っただけで、見る目が変わってくるじゃないですか。「あ、やってるな」と分かれば、対処のしようもあります。「政治的な動きをするなよ」とけん制することで、やがて社内政治は少なくなっていくんです。逆説的ですけどね。
ここまで書くと、このコラムのタイトルがダブルミーニングを含んでいることに気付く人もいるでしょう。 表の意味は「社内政治という場において、負けないためのスキルを獲得しよう」ですが、裏の、そして真の意味は「社内政治なんかに負けず、正論が正論として通る、風通しが良い組織を作ろう」なのです。
「社内政治『なんか』に絶対負けない法」を1人でも多くの方に知ってほしいと思います。(木田知廣)
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