女性はみんな知っている!? 化粧品「ロクシタン」の身近でリッチなマーケティング(2/2 ページ)
大手化粧品メーカーが足踏みしているのを尻目に、「ロクシタン」が順調に売り上げを伸ばしている。製造からマーケティングまで一貫した「トゥルーストーリー」を掲げて、消費者に訴求しているのだ。
一貫したストーリー提案
集英社と共同で2010年5月に始めたフリーマガジン「L'OCCA」にもライフスタイル提案は満載だ。ファッションやインテリアグッズなど、商品にこだわらない情報提案を行っている。特にWeb版L'OCCAは、集英社の「s-woman.net」上に開設しており、ユーザーが自由に情報交換する掲示板「コミュニティ」、ユーザーが写真を投稿して構成される「ある日のL'OCCA」、店舗店長のブログ、著名人がギフトについて語る「ギフトリレー」、プロヴァンスの魅力をスタッフが伝える「プロヴァンス時間へようこそ」などさまざまなコミュニティ機能が満載。会員数こそ1万人を超えた程度だが、ロイヤリティの高いユーザーによって積極的な投稿や意見交換がなされている。
こうした提案は、ユニークな流通ルートの開拓にもつながっている。ロクシタンの持つストーリー性は、南仏のリゾート感覚とともに、ANA、JALでの機内販売、そしてフォーシーズンズホテル椿山荘、ホテルニューオータニ、シギラ ベイサイドスイートなど高級ホテルで「お客さまにプロヴァンスの快適をお届けする」ことをコンセプトに、ホテルの客室用アメニティの提供までを可能にした。
一貫したストーリー提案が、さまざまなプロモーション施策や流通チャネル開発を有機的にリンクさせたこの見事なマーケティング戦略は、高い利益率にも表れている。売り上げ規模では同等のザ・ボディショップと比較しても、利益率は倍以上だ。
メンズ向け商品「ヴェルドン」も好調
2010年秋に発売を開始したメンズ向け商品「ヴェルドン」も好調だという。男性に特化したラインとした初の試みだが、女性向けの「南仏プロヴァンス」ではなく、「フランスのグランドキャニオン」とも呼ばれるヴェルドン渓谷から採用されたネーミング通り、自然さ、シンプルさが売りだ。こちらは幅広い認知を図るために、通常の店舗プロモーション、ダイレクトメールに加え、新聞広告も積極的に採用した。
しかしここはロクシタンらしく、佐藤隆太、遠藤保仁、藤代冥砂、別所哲也、飯沼誠司と、各界で活躍する個性的な5人の男性が、自らの人生観とヴェルドンの使用感についても語るという広告内容となった。
朝日新聞公告局「広告月報」でのインタビュー記事によると、ユーザーは30〜40代にとどまらず、50〜60代にも広がっているという。ヴェルドンの打ち出す世界観は確実にユーザーに届いているようだ。(猪口真)
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