第46鉄 雪国の美女とダイヤモンドダスト――米坂線:杉山淳一の+R Style(6/6 ページ)
東京に雪が降った。雪が少ない地域に暮らしていると、わざわざ列車に乗って、雪を見に行きたくなる。4年前、2007年に乗った米坂線を筆者は今も忘れられない。生まれて初めて見たダイヤモンドダストと、美少女との出会いを……。
彼女は山形鉄道との乗換駅、今泉で降りていった。私も山形鉄道に乗るつもりだから、一緒に行ってもよかったけれど、さすがにそれはしつこいだろうと思い、予定通り米沢に向かった。雪景色を眺めに来たつもりが、彼女と話している間はちっとも景色を見ていなかった。中年オヤジが若い娘と話して、粉雪のように舞い上がってしまったというお話。いま思い出すとかなり恥ずかしい。でも、話しかけてよかった。あれから4年、きっと彼女は夢をかなえて、春から教壇に立つんだろうな。
私は旅先で年寄りや子供と打ち解けることはあっても、若い女性と親しくなる機会はめったにない。あの出会いはきっと、ダイヤモンドダストが魔法をかけてくれたんだと思っている。ダイヤモンドダストのように、一瞬だけきらりと光って消えていく、貴重な、そして美しい思い出の1つ。何度も旅を続けていると、そんな奇跡も起きるらしい。
今回の電車賃
JR周遊きっぷ「山寺・松島ゾーン」3300円。
ゆき券(都区内−新潟・白新・米坂・奥羽)6550円 かえり券(奥羽・福島・新幹線・大宮・東北)4620円。
※周遊きっぷ「山寺・松島ゾーン」はその後廃止。今回のルートは青春18きっぷでも乗車可能。米坂線乗車後に奥羽本線で帰路につけば夜行日帰りできる。その場合は新宿-高崎間の普通乗車券(1890円)+青春18きっぷ1回分(2300円)。
著者プロフィール:杉山淳一
肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」
コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。
趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。
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