IT化で企業の効率が低下する理由(2/2 ページ)
企業がITに期待していることの1つが「効率化」。しかし、IT化が進んでも、業務が効率化されない例を見かけることは少なくない。なぜ期待とは逆に、余計に忙しくなってしまうのだろうか。
パワーポイントの機能に遊ばれている?
パワーポイントは、トークで補完することを前提とした「見せる」ツールなのでしょうが、話で上手に説明・補完するのかと思いきやそうでもありません。10枚資料があるけども2枚くらいでいいのではないかと、ほとんどの場合で感じてしまいます。そうでないなら8枚の無駄を生み出す効率低下ツールとしか言えません。プロジェクターでスライドショーを見せられても、慣れてしまっているので今や誰もインパクトを覚えませんから、実質的にはパワーポイントの機能に遊ばれている状態です。
インターネットによって、1つのことに集中している時間が減った可能性もあるように思います。私もそのようなことがあるので分かりますが、検索している間にあちこちに関心が行ってしまい、さまざまなページを見ている間に時間が過ぎていったり、集中力が落ちたり、目的を忘れてしまったり、ひどい場合には何をしていたか忘れていたりするといったことを多くの人が経験していると思います。
ふと疑問に思ったり、知らないことがあったりすればすぐに検索する、そして頻繁に関心がほかに飛んでしまうと、集中している時間が細切れになってしまうので仕事が遅れがちになります。まとまった時間に集中して進めるのと比べれば、時間の使い方として効率が悪くなります。
さまざまな手続き書類の増加が、現場の効率を落としているという現実も、間接的にIT化が影響していると言えます。管理部門には、何だかんだの書類の発送や回収や集計をシステムやメールを使って楽にできるようになったというIT化の恩恵があります。作業が楽になったので、管理部門はどんどん書類を作っても平気ですが、提出させられる方は大変です。
あるいは、入力作業のような管理部門がやっていた作業を、システムの導入によって現場でもできるようにしたので、現場で自分たちがやってくださいということもあるでしょう。そうやって現場では、付加価値を生む時間が削られていくので、効率は低下の一途となります。
こうしてみますと、IT化は定型的な業務に関わるコストを効率化することには貢献したかもしれませんが、上のような状況を生み出してしまったことで、企業・組織全体として効率を大きく落とすことになった可能性が高いのではないかと考えます。論理的に示すことはできませんが、少なくとも「昔よりも忙しくなった」という多くの人の実感とは合致するはずです。(川口雅裕)
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