トップセールスが共通して語る「3つのE」とは
営業にとって、セールスする商品の知識は必要不可欠。しかし、トップセールスになるためにはそれだけで不十分。筆者はトップセールスのトークには顧客の心を動かす「3つのE」があると主張する。
著者プロフィール
川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
営業に携わる人たちにとって、商品に関する知識は当然必要です。しかし、消費者の購買行動がAIDMA「Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)」から、AISAS「Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(ネット上で評価を共有)」に変わったと言われるように、ネット時代では商品の情報入手が容易になったため、それを営業パーソンに頼る必要性は極端に低下しました。
そもそも、「トップセールス=最も商品知識がある人」ということはありませんし、商品知識が豊富になればなるほど成績が上がっていく、ということもありません。しかし、営業パーソンの教育や営業研修では、商品知識の習得・詰め込みがよく行われているようですし、ロールプレイでも、間違ったことを言っていないかどうかのチェックに終始しているようなことが少なくありません。
商品知識偏重の営業教育は、成果につながりません。情報入手コストが格段に下がったネット時代において、営業パーソンに求められるセールストークとは、次の「3つのE」ではないかと考えます。
1.Evidence(証拠・証明)
「この商品やサービスが顧客個別のニーズを満たすのはなぜか」という証拠を示すことです。購入してもらうには、失敗したくない、だまされたくないといった顧客の警戒心や不安を解消しなければなりません。そのためには商品のスペックや一般的なメリットだけでなく、その顧客個別の要望を満たす理由について、できれば客観的なデータや論理で示すことが大切であるということです。
ただし、これは営業側の「理屈」であって、購入という行動に導く、顧客の心を動かすには十分とは言えません。
2.Example(事例・声)
「例えば……」と言って、ほかのお客の具体的な事例、喜びの声、高い評価などを挙げることです。「ほかの方々はこの商品やサービスを利用してこう言っておられた」という話は顧客の心を動かします。
顧客の多くは「ほかの人はどうしたのだろう(=自分だけ損をしたくない)」という関心を持っています。営業パーソンの言葉や広告を真に受けるほど、単純ではありません。状況やニーズを同じくする人たちの評価や声を、的確に紹介していくことが顧客の心を動かすというわけです。
3.Episode(物語)
あるお客の状況や迷われた内容、それに対して営業として提案したこと、結果やその後を具体的に紹介することです。上の「事例」とは異なり、1人のお客の悩みの状況やプロフィール、それに対するこちらの提案や支援、紆余曲折と結果について話します。
ほかの人の成功話でお客の気持ちを動かすとともに、それを支援した営業パーソンあるいは会社への関心と信頼を高め、大きな安心を持ってもらうことができます。無味乾燥になりがちな商談を、エクサイティングなものにする効果も期待できます。
実はこの3Eは、ある大手企業で実施した営業研修の後で、トップセールス数名に共通していることを考えていて気付いたことなのですが、営業部門で実施する教育・研修は、この3つのEを、顧客との対話の中にしっかり織り込めるようにすることが、大切なポイントだろうと思います。
個人個人に対しては、各々の営業の経過や結果を振り返らせ、蓄積させることでしょうし、組織では、3E(証拠と事例と物語)を上手に共有していく仕掛けや仕組みを作らねばなりません。(川口雅裕)
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