スマートフォンと連携する腕時計、スマートウオッチが切り拓く新しい時代とは?(4/4 ページ)
カシオ計算機が2011年に発表したスマートフォンと無線で連携する腕時計。いわばスマートウオッチともいうべき新ジャンルの登場で、腕時計との付き合い方がどのように広がるのか? その開発者であるカシオ計算機の中島悦郎氏と奥山正良氏に聞いた。
通信機能で「腕時計」が「スマートウオッチ」へと進化
このように、ほかのデジタル機器とつながることで、腕時計は単に時刻を知るための道具から、シーンに応じて最適な情報をユーザーに伝える、あるいはユーザーの現在の状態をセンシングする、いわば人と情報空間とを結ぶ出入り口へと進化することになる。
腕時計自体は小さな機器のため、その中に搭載できる情報量や機能は限られているが、例えばスマートフォンを介してインターネットに接続することで、その上にある無限の情報やサービスを利用できるようになるし、遠く離れた場所にいる家族や恋人とのつながりを感じられる腕時計といった、便利なだけでなくユーザーの心に響く機能を実現することも可能となるだろう。
これは、どこからでも電話をかけたり受けたりするための道具として生まれた携帯電話が、データ通信やアプリといった機能の登場によって、いまでは電話というよりもむしろPCに近い存在へ進化したのに似ている。スマートフォンになぞらえるなら、「腕時計」から「スマートウオッチ」への進化ともいうべきだろうか。
また、携帯電話の普及により時間を知るためには必ずしも腕時計が必要ではなくなりつつある現代においては、「腕時計市場にとって携帯電話は敵である」という見方もしばしばなされる。しかし、腕時計に通信機能を追加することでむしろ互いが補完的な存在になるという構図も興味深い。「腕時計は“スマートウオッチ”化することで、携帯電話と共存する商品になり得る。『携帯があるから時計はいらない』という世代にも受け入れられる商品になるのでは」(中島氏)。
可能性が大きく広がる一方で、Bluetooth Low Energyを採用した理由でもある、腕時計としての価値を損ねてはならないという考え方はあくまで守っていく姿勢だ。奥山氏は「もちろん、まったく新しい商品の可能性にもチャレンジしていきたいと思いますが、基本は今ある時計のブランドの中で、機能の進化として提供したい」と話す。通信は特別な商品のためだけのものではなく、電波時計やソーラー充電などと同じように、商品カテゴリーを問わず幅広く普及していく機能になるという見方を示した。
Bluetooth Low Energy対応の腕時計やスマートフォンが実際に発売されるのは今年の年末商戦以降になる見込み。当初は今回発表されたデモ機のような機能からスタートするが、将来的にはより消費電力を削減しソーラー駆動への対応や、腕時計同士が直接互いに通信するような使い方も検討していきたいとしている。腕時計の新たな世界を切り拓く魅力的な製品の登場が期待される。
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