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ドクロの数珠を若者に――「祈りの多様化」に商機あり:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
ドクロデザインの数珠や一番摘み静岡新茶のお線香など、ユニークな仏具関連商品を展開するお仏壇のやまき。浅野秀浩社長が商品開発に取り組んだ背景には、「業界は若い人向けの商品を作っていなかった」ことに責任を感じたからだという。
供養の変化から新市場が生まれる
およそ20年前まで葬儀業は人材派遣業だった。自宅で葬儀をする家にスタッフやお花、クルマを派遣するビジネスモデル。だが自宅で葬儀をする習慣が薄れて、葬儀会館に需要が移った。会館が雨後の竹の子のように新設される“会館バブル”が訪れた。
ところがここ数年、直葬つまり病院から火葬場に“遺体を直送”する習慣が広まってきた。『葬式は、要らない』(島田裕巳著)というベストセラーも出現。故人をしのぶのはホテルのパーティとなり、会館バブルが弾けた。死者は増えても会館稼働率は低下している。
仏壇をめぐる需要変化にも似た状況がある。昔は祖先が眠る裏山の墓に毎朝お参りした。都市化でそれができなくなり、家でお参りできる仏壇が重宝されるようになった。仏壇とは“小さなお寺”なのだ。ところがそれも次第に略式になり、位牌さえ収まればというシンプルモダンなデザインに移ってきた。
では、祖先を崇めたりすることや、霊的なものへの関心は薄れたのか? いや、パワースポットやお寺巡りなど、若い層でむしろ霊への関心は高まっている。従来の「葬儀→火葬→骨→墓所→仏壇→お盆や●回忌」が簡素化されても、供養がなくなることはない。
ただ、祈りは多様化する。ドクロの念珠も一番茶のお線香も、祈りの変化の先取り商品なのだ。
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