“私のリクエスト”で稼ぐ、新たなラジオビジネス:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
米国人口の3割のユーザーを抱えるネットラジオのパンドラ。先日の上場で時価総額26億ドルの企業となったが、その人気の秘密は“リクエストビジネス”にあるようだ。
リクエストはビジネスモデルを変える
話をパンドラに戻そう。同社の2011年1月期の売上高は約1億3800万ドル(約100億円)、その9割弱が広告収入で、支出の大きなものは曲使用ライセンスの支払いである(決算は32万ドルの赤字)。一般のラジオ局と違ってパンドラはコンテンツを制作しない。
一般ラジオ局=収入は広告、費用は放送コンテンツ制作
パンドラ=収入は広告、費用はリクエスト曲のライセンス
ラジオ局の経営不振は、リスナー離れ→広告収入減→コンテンツの質低下→リスナー離れのスパイラルと言われる。ところがパンドラではリスナーがコンテンツを作って幸せになる。リスナーの好みを分析して選曲するだけだ。コンテンツ制作という、費用がかかり組織が複雑になる部分がない。パンドラはラジオのビジネスモデルも変えた。
商売の始まりにリクエストあり
そう、リクエストには常識をひっくり返す力がある。リクエストで事業は変革できる。例えば閉店が相次ぐ本屋で、“立ち読みリクエスト”ビジネスを考えた。
ユーザーは立ち読みしたい本というリクエストを送る。“立ち読み.com”Webサイト(仮称です、念のため)は、リクエストを受け付けてネット上で立ち読みさせる。月間5冊まで、新刊発売後6カ月以降など制限をつけてもいい。例えば「もしドラ」なら、ページ中に野球用具の広告がついて、ECサイトに飛ばして通販もいい。広告や販売収益の何%かを著者や出版社に支払う。なかなか売れない電子書籍にも朗報となる。売りが閑古鳥なら、立ち読みリクエストをビジネスにするのも手だ。
コンテンツを売るのではなくリクエストを売る。思えばすべての商売はリクエストから始まったのである。
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