第50鉄 小湊鐵道と養老渓谷とわらじトンカツ――房総横断ローカル線紀行(前編):杉山淳一の+R Style(5/5 ページ)
東京から鈍行で1時間。千葉県の房総半島には、小湊鐵道・いすみ鉄道というローカル線が走っている。美しい滝、ムーミン列車、絶品とんかつ……奥深い千葉ローカル線の旅、今回は前後編でお送りしよう。
わらじトンカツでお腹いっぱい
上総中野駅から約20分ほど。車窓の左側にちらりと城が見えて、デンタルサポート大多喜駅に到着した。車窓から見えたお城が気になるが、お腹が空いた。時刻は13時を過ぎている。
もしここで美味いトンカツを食べたかったら、急いで改札を出よう。大多喜駅にはいすみ鉄道の車両基地があり、名物のキハ52も見られる。しかしいまはトンカツだ。大多喜ではトンカツを食べるべきなのだ。改札を出て、斜め右の道を降りて徒歩数分。地元だけではなく、いすみ鉄道を訪れる観光客の間で有名な「とんかつ亭 有家」に行かねばなるまい。何しろ大人気で、お昼の時間帯で売り切れになり、早仕舞いすることも多いそうだ。
大多喜城の城下町だけあって、主力メニューは「大名(ヒレ)」「家老(ロース)」「旗本(肩ロース)」と名付けられている。この他にアーモンドを使った「カルフォルニアとんかつ」や明太子入りの「博多とんかつ」などの変わりメニューも面白い。その中から私が選んだ品は「わらじとんかつ(特大)」。食いしん坊の私は「特大」を見逃さなかった。しかもメニューの中では安めの1050円。旗本より安い足軽価格(?)だから期待薄かと思ったけれど、ジューシーな肉だった。衣は玉子をたっぷり使っていて、コクがある。
満腹で元気になったところで大多喜駅へ戻る。実はとんかつ屋さんに急行したため、通過したスポットがある。「房総中央鉄道館」といって、鉄道模型のパノラマや鉄道部品を展示しているミニ博物館だ。入場料は大人200円、小中学生は100円。ただし、いすみ鉄道フリー乗車券を持っていると半額になる。
館内は奥行きが広く、入ってすぐ右手にNゲージの大パノラマ。左手は鉄道中古部品などの販売コーナーだ。奥に行くとHOゲージのキハ52が走っている。その先に、なぜかエイリアンのマスクやフィギュアなどがあり、突き当たりは駅名票などのコレクション展示コーナーとなっている。他にも路面電車や小さなNゲージレイアウト……。地元の鉄道ファンのコレクションを持ち寄って公開しているようだ。今回は10分ほどしか時間がなかったけど、いずれじっくりと訪れたい。
今回の旅はこれでまだ半分。このあとはいすみ鉄道名物の「キハ52」で大原まで往復し、また大多喜に戻って大多喜城へ。そしてもうひとつの鉄道スポットを巡り、ラストは大自然の不思議を楽しむ……というわけで、後編をお楽しみに!
今回&次回(50鉄〜51鉄)の電車賃
JR東日本 東京−五井 950円、大原−東京 1620円。
※東京近郊から出発する場合はJR東日本のホリデー・パスがオトクな場合も。2300円+400円(エリア外の茂原−大原駅間は別途乗車券が必要)
小湊鐵道 五井−上総中野 1370円
養老渓谷探勝バス 上総中野−粟又の滝(往復) 380円×2
いすみ鉄道 一日フリー乗車券 1000円
著者プロフィール:杉山淳一
肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」
コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。
趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。
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