スターバックスに学ぶ、顧客満足度向上のポイント(2/2 ページ)
スターバックスといえば、大手コーヒショップチェーンの中でも顧客満足度の高さ、リピーターや愛用顧客が多いことで有名です。そこで、なぜスターバックスがファンを獲得して支持されるのかを、サービスサイエンスを活用して考えてみました。
CS向上の努力の方向性は2つ
CS向上の努力の方向については、大きく2つあります。それは「失点をなくす努力」と「得点を増やす努力」の2つです。
「失点をなくす努力」とは、お客さまを怒らせないことを重視したもので、マニュアルの活用やマナー教育がその代表例に当たります。この種の努力はこれまで多くの企業でも実施されてきたのではないでしょうか。
しかし今の時代、この「失点をなくす努力」だけでは、高いCSを獲得してリピーターを獲得することが難しくなってきました。そこで注目されているのが「得点を増やす努力」です。これは、お客さまの期待に応えたり、思いもよらないサービスを提供したりして大満足や感動をしていただくというものです。
そしてこれを実現するために必要な施策の1つが、「ビジョン共有と権限移譲」による柔軟なサービスの提供になります。これを行うことで、別の記事「CS向上のコツ『どの事前期待に応えるか』」でいうところの「個別的事前期待」「状況で変化する事前期待」「潜在的事前期待」に応えて高い評価を得ることが可能になるのです。
ただし、「CS向上の努力の方向」というのも、サービスのコンセプトに合った方向性でなければなりません。やみくもにマニュアルを廃止して、ビジョン共有と権限移譲をしたところで、成果につながるとは限らないのです。つまり、マニュアルが非常に有効なサービスもあれば、そうでないサービスもあるということです。大切なのは、自社のサービスがどういったサービスの種類・コンセプトなのかをしっかりと定義して、「それに合った努力は何か」をしっかりと考えるということです。
サービスの種類を定義する
そこで、サービスを例えば2つの切り口で分類してみると、いかにサービスの種類によって努力のポイントが違ってくるかが分かると思います。今回のケースでは「手順型⇔気付き型」「ハイトレーニング⇔ロートレーニング」の2軸で分類してみました。
「手順型×ロートレーニング」のサービスには、例えば配送サービス・清掃サービスが該当します。ここでの努力のポイントは、「マニュアル化、手順化、チェックリスト化」になります。
「気付き型×ハイトレーニング」のサービスには、例えばコンシェルジュサービスやカウンセリングなどが該当します。この場合の努力のポイントは、「共感性、ビジョン共有、権限移譲」となります。
ここで言いたいのは(どちらが優れているかということではなくて)、「手順型×ロートレーニング」サービスでの努力のポイントを、「気付き型×ハイトレーニング」サービスに適用しても、効果的なCS向上施策にはなりにくいですよね、ということなんです。その逆も然りです。
ですので、CS向上の努力のポイントを考える際には、自社のサービスの種類・コンセプトは何で、そこでの効果的な努力とは何かを考えることなのです。それを考えるためのヒントとして、「CS向上の方向には2つある」ということと、「サービスを2軸で分類してみる」ということをご紹介させていただきました。
ちなみにこういった視点で見てみると、スターバックスは「コーヒー提供サービス」ではなくて「コンシェルジュサービス」であるということになりそうです。だからこそ、「マニュアル」ではなく、「ビジョン共有と権限移譲」によるサービス品質向上に価値があるんですね。スターバックスの他店にはない魅力が、このように見てみると少し論理的に理解できたような気がします。(松井拓己)
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