ドイツとフランスが対立、欧州危機は誰が救うべきか?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
ギリシャの債務危機に端を発する欧州危機が収束する気配が見えない。その一因は、国債の買い入れをめぐって、ドイツとフランスの意見が対立していることにある。
日本も金融ツナミに襲われる
ただ、イタリアやスペインの資金調達コストが持続不可能とされる水準を超えそうになれば、デフォルトを防ぐためにもECBがこれらの国債を買わざるをえなくなるのかもしれない。ECBが市場の信頼を失う損失も大きいが、ユーロ圏から一部の国が離脱するような事態になれば、その損失も計り知れないからである。
もちろん影響は欧州だけではない。すでに英国の4大銀行がギリシャやスペインなどの銀行への融資額を7〜9月の3カ月で25%もカットしたと伝えられている。とりわけHSBCは40%も残高を減らしたという。もしイタリアの債務危機が深刻になって、銀行が保有するイタリア国債(総額約1兆9000億ユーロ=約144兆円)の減額などという話になったら、銀行間信用はさらに縮小する。その金融ツナミはあっという間に日本経済をも襲う。対欧州輸出の多い中国や東南アジアもその波にのみ込まれることになるだろう。
さすがに日本でもこの欧州の国家債務危機を対岸の火事とは考えなくなっているように見えるが、それでも直接の損害はそれほど大きくないという見方が根強いように見える。実際にはそうではない。銀行間の信用縮小は、銀行の貸し渋り、貸しはがしを招く。当然、資金繰りに窮して倒産するところも出る。東日本大震災、そしてタイの洪水と日本企業は自然災害に悩まされているが、この金融ツナミは自然災害よりもはるかに大きな影響を持つ可能性がある。
自らをドジョウと呼んだ野田首相、ちびっ子ギャングと呼ばれる安住財務相、果たしてこの金融ツナミ第二波のダメージコントロールはできるだろうか。リーマンショックの影響を完全に読み誤った与謝野経済財政政策担当相の轍(てつ)だけは踏んでほしくない。
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