橋下徹氏と既存メディア離れの関係:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
「バカ文春」「バカ新潮」――。Twitter上に取材プロセスをツイートしたのは、大阪市長選に勝利した橋下徹氏。記者会見がネット中継を通じて可視化されたように、今後は記者がどのような取材をしているのかが“漏れる”時代になりそうだ。
新興ツールに合わせた取材態勢を
もちろん、筆者は橋下氏の言い分を丸呑みしたわけではない。今後、Twitterで名指しされたメディアがどのような姿勢で彼の行政手腕を取材分析していくかに注目している。
いずれ主要メディアは彼と意見が衝突する場面も出てくると思うが、こうした過程はTwitterなどを通じ、かなりの部分が可視化されていくことをキモに銘じておくべきだ。記者会見がネット中継を通じて可視化されたことと同様に、取材プロセスも今後は可視化が進む端的な例となり得るとみる。
また橋下氏の手法を導入し、情報発信や記事への反論を展開する政治家や企業経営者も増えていくはずだ。
筆者は記者出身だ。仮に、彼のような人物を取材することになったら、「やりにくいことこの上ない」というのが率直な感想だ。
彼のように舌鋒鋭く、かつ主張を強く押してくるタイプの人物は、取材者と取材される側の思惑が100%近い形で合致することを求めがちだからだ。
要するに、悪意ではなくとも、自分の意図するような記事を好む傾向が強い、と言い換えることもできる。また、Twitterのような情報拡散力の高い媒体で、30万人以上の動員力を持っていることで、「あの記事はけしからん」的な議論の流れを作られてしまう懸念もある。
だからといって、メディア側が橋下氏に擦り寄れば良いとは決して思わない。
現状、大手紙やテレビ局の中には、依然としてTwitterやFacebook、各種の動画ニュースサービスなどの存在すら認めようとしない幹部が少なくない。インターネット上の新たな情報ツールの存在感増大を無視したまま、旧態依然とした取材態勢、紙誌面、番組作りを続けようとすれば、一般読者や視聴者の“既存メディア離れ”に拍車をかける事態にもつながる懸念がある。
新たな大阪市長とメディアの駆け引きは、今後のマスコミの取材態勢の新たな基準になる可能性を秘めている。
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