デジカメ全盛の時代だけど……暗室barで手焼き写真はいかが?:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
学芸大学駅前にある写真店「monogram」が定期的に行うイベント「暗室bar」。デジカメ全盛の世の中となっている中、フィルムカメラのネガを手焼きでプリントするワークショップを行っているのだ。
“実体”を求めるカメラピープル
フィルム写真は3.11後、その価値が再認識された。
「震災後にプリント注文が増えました。フィルム写真は化学的に定着していますから、汚れても洗浄できます。“印画紙の写真は強い”と注目されました。『また、警報が鳴ったら何を持って逃げる?』と聞くと、『写真アルバム』と言う人が多かったんです。写真は失われると取り返しがつきませんから」とミヤモトさん。
画像をクラウドに保存するのも便利だが、本人が死んだらパスワードが分からないので誰も取り出せない。USBメモリやHDDに保存するとしても、壊れてしまいがち。でも、プリント写真なら、しわくちゃになって破れても「これは同級生の次男坊だ」と分かる人なら分かる。
震災後、「実体があるもの」や「実体のある生き方」が求められるのと、フィルム写真の需要はどこか通じている。
デジタルカメラの普及でシャッターを切る回数は10年前の数倍になったが、プリントは逆に数分の1になったように思う。300〜400枚を平気で“写し飛ばせる”デジカメは、撮ったそばから「何撮ったっけ?」になる。
だが、36枚のフィルムは重い。1枚1枚に込められた思いがある。撮りたかったことを手製アルバムで素直に表現しやすい。
スローライフ、スローカメラ。心の底でみんながリアルを求め出した時代には、印画紙からじんわりと浮かび上がるフィルム写真がぴったり。その需要に光を当てれば、新しい写真マーケットが浮かび上がる。モノグラムでの第10回「暗室bar」は12月16日開催。予約不要なので、興味を持った方は気軽に足を向けていただければ。
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