組織が先か、ビジョンが先か?――橋下氏圧勝から若者が望んでいることを考える(2/2 ページ)
多くの企業が流行のように取り組む、ビジョンや理念の策定。「組織は戦略に従う」という言葉もあるが、今回の大阪市長選挙ではそれが支持されていないことが明らかになった。それはなぜなのだろうか。
ビジョンを策定しても既得権が守られていては意味がない
この結果を、企業経営者も自分に置き換えて考えなければならないと思う。ここ10年ほどだろうか、「企業理念や行動規範を作成したり、経営方針や中期計画を立てたりして、ビジョナリーであることが人心を掌握するために大切である」というような考え方が流行している。それによるとビジョンを掲げ、それに至るロードマップを明らかにすることが経営者の責務だというが、橋下さんに対する支持を見た時に、本当にそうかという疑問が湧いてくる。
業務を硬直化させている権限やルール、アイデアや創意工夫を阻む管理職の能力と縄張り意識(セクショナリズム)、既得権を持った管理職層を守り、優遇する仕組み。それらを壊し、組み立て直すことこそ若者が求めている、ビジョンの策定より先にやるべきことではないのだろうか。
「Strategy(戦略)」を構築することと「Structure(組織構造)」「System(システム・制度)」を変革することとは、対立や軋轢(あつれき)が生じるか否かという点において大きく違う。後者に関わると必ず反対や不満や不安が出て来るので、手を付けにくい。さらにその反対や不満や不安の発信者との、しがらみ(壊せない理由)を十分に持っているのだから、そんな人たちには組織や制度を改革するのは無理だ。
恐らく、多くの若者には橋下さんと同じように、戦略が組織に限定されてしまう、旧態依然の組織や人材では限界があるということが見えているのだろう。私は、「組織や制度が、戦略に優先する」と堂々と主張した橋下氏に大いに期待をするし、そのことが企業経営者にも気付きと好影響を与えてくれることを願っている。(川口雅裕)
関連記事
- 中小企業の新卒採用が失敗し続ける理由
一般的に大企業より遅れて採用活動を行う中小企業。「自分たちのような中小企業は、大企業が採用しなかったような学生しか採用できないという、いかにもプライドのない前提に立っているのは、いかがなものか」と筆者は主張する。 - 「成長したので昇進させたら失敗した」となる理由
企業人事において、「任せられる」「成果が出ている」「自信を持っている」という状態を見て、十分に成長したと判断し、上の階層に昇進させたら、全然ダメだったということがよく起こります。これは、なぜ起こるのでしょうか。 - リクルート「就職人気企業ランキング」の公表取りやめを歓迎する
リクルートが今春から「大学生の就職志望企業ランキング」の公表を取りやめる方針を明らかにしたという。「行列ができる店はウマイのだろう」という発想と同じような就活が、変わっていくための一歩として期待したい。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.