私を奈落の底に落とした、スキャンダルとは:中田宏「政治家の殺し方」(1)(2/2 ページ)
「女性スキャンダルまみれ」で「ハレンチ市長」と命名された、前横浜市長の中田宏氏。悩み苦しんで「白髪頭」となり、「死」を考えたこともあったという。そんな彼が、政界の隠れた裏側を告白した。
では、なぜ、こんな目に遭ったのか?
一言でいえば、私の市長として実行した改革が、既得権益や利権を奪われた人びとの恨みを買い、その報復としてバッシング記事が仕掛けられたということだ。私のイメージダウンを図り、政治生命を絶とうとしたのだ。
一連の報道を受け、横浜市議会でやり玉に挙げられたが、私は相手にせず、出版社を相手取った名誉毀損裁判を起こした。ありもしない女性問題で議会の進行を遅らせたくはなかったからだ。少なくとも係争中は黙秘できるし、裁判で真相が明らかになれば議会で追及されることもなくなる。「全ては裁判で明らかになる」と表明し、粛々と市長職をこなした。それが私なりの反撃だった。
そして、最初の報道から約3年が過ぎた2010年10月、特に悪質だった3つの記事(強制わいせつ疑惑、公金横領疑惑、市長公務の放棄疑惑)について「こうした事実はない」と裁判で認められた。さらに、「私と結婚の約束をしていたのに裏切られた」として元ホステスの女性から慰謝料を請求された裁判でも、交際の事実がないとして訴えが棄却された。
これで晴れて潔白が証明されたわけだが、読者の中には「そうはいっても、つけいられるような事実があったんじゃないか?」と詮索する向きもあるかもしれない。「火のないところに煙は立たず」という言葉もある。しかし、実際にそうした事実はない。
私を陥れようとする者たちの狙いは、一時的にターゲットを貶(おとし)めることであって、事実であるかどうか、裁判で勝つか負けるかなど関係がないのだ。
そこに隠された真実とは何なのか。現役市長を辞したいまだからこそ語れる地方政治のダークな世界を、皆さんにお伝えしていきたいと思う。
(続く)
関連記事
- 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - 朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由
気鋭のジャーナリスト、上杉隆氏、相場英雄氏、窪田順生氏の3人が、Business Media 誠に登場。「政治評論家に多額の資金が渡った」と指摘されている官房機密費問題や、メディアが抱える問題点などについて語り合った。 - なぜこの国に、“モミ消しのプロ”は存在しないのか
ジャーナリスト・上杉隆氏をホストとする対談連載1回目。事件などを追い続けているノンフィクションライター・窪田順生氏を招き、メディアの現状や課題などを語り合った。 - 編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編)
発行部数の減少、名誉棄損訴訟、休刊……雑誌を取り巻く環境はますます厳しくなっている。そんな状況を打破しようと、“週刊誌サミット”が5月15日、東京・四谷の上智大学で開催された。第1部の座談会に登壇した、田原総一朗氏や佐野眞一氏らは何を訴えたのだろうか? - 相撲八百長疑惑の記事に4290万円。しかしまだ戦える――『週刊現代』加藤晴之前編集長
スクープを追い続ける週刊誌にとって、訴えられることは“日常茶飯事”の出来事なのかもしれない。賠償請求総額が24億円を超える『週刊現代』の加藤前編集長は、訴えられることについてどのように考えているのだろうか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.