オリンパス以上の“粉飾”予算、なぜ民主党は歳出削減できないのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
12月24日に政府が決定した2012年度予算案。復興経費など、膨張する歳出の一部を一般会計から外すことなどで見栄えを取りつくろったが、実質的な国債発行額は約47兆円と過去最高。なぜ民主党は歳出削減に切りこめないのだろうか。
賞味期限が尽きかかっている民主党
なぜこれほどまでに政治が劣化しているのか。先日、ある人が「選挙が多すぎるからだ」と言っていた。確かに最低でも4年に1度は衆院選があり、3年に1度は参院選がある。その他に地方選挙がある。先の大阪ダブル選挙は、中央政党も巻き込んで大騒ぎになった(橋下阻止に動いた大政党が、橋下氏が勝ったとたんに、手のひらを返したように橋下大阪市長にすり寄っているさまは、見ていてうんざりするものがある)。
民主党の前原政調会長は、橋下市長との会談だったか、「示された民意は尊重しなければならない」と語っていた。しかし敢えて言わせてもらえば、それでは橋下阻止に動いたのはなぜだったのか。その民意の中身とはいったい何なのかについて明快な説明はない。
実際のところ、民意は常に正しいわけでも、常に明確なわけでもない。争点がはっきりしているような場合(たとえば2005年の郵政選挙)でも、まさに民主党が主張したように、問われたのは郵政民営化についてだけであり、その他の問題で民意が示されたとは言えないのである。もっと言えば、国民は小泉首相に肩入れしただけなのかもしれない。
借金の重みに耐えかねて徐々に沈みつつある日本。いま必要なのは、とにかく10年後、20年後のビジョン、とりわけ年金、医療、介護などの社会保障の姿、そこに至るための道筋、そしてそれを支える財政の姿と再建のロードマップを国民に提示できるリーダー、政党なのである。野田首相に欠けているのはこの道筋を描くことだ。
来年度予算でも基礎的財政収支は22兆円のマイナス。この先、経済成長率がそう高くなることはないから、2015年までに消費税率を10%にしても、民主党が描いた2020年までに基礎的財政収支を黒字化するという目標にはとうてい届かない。増税ばかりが前に出てくれば、当然のことながら経済の活力を削ぐ。成長戦略といっても政府が描く成長戦略よりも規制を緩和して民間の知恵を動員するほうがよほど効率的かつ効果的だろうと思う。
自民党の賞味期限が尽きるまでには半世紀近くかかったが、民主党の賞味期限はすでに尽きかかっている。こうなったら、政策を練り直して政界大再編をするしかないとは思うが、いまの政治家たちにその器量があるかどうか。国会議事堂が大デモ隊に囲まれるような日が再び来るかどうかは分からないが、それぐらい怒る国民も必要かもしれない。
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