野田改造内閣がやるべきこととは:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
1月13日に改造内閣を発足させた野田首相。岡田克也氏を副総理にすえ、消費税増税と社会保障の一体改革への決意を語るが、消費税を2015年までに10%にしたところで、本当に社会保障は持続可能になるのだろうか。
日本は欧州の轍を踏むか
財政危機が金融危機に波及するかどうかの瀬戸際に立っている欧州では、4月までにイタリアが1000億ユーロ、ギリシャは3月に150億ユーロの国債が満期を迎える。イタリアの10年国債利回りも危険水域と言われる7%前後からなかなか下がらない。この状態で1000億ユーロも借り換えれば、イタリアにとっては利払い負担が急増することを意味する。
さらに問題はギリシャだ。一応、民間銀行と合意ができていたギリシャ国債の50%減額の交渉がまだまとまっていない。つまり「秩序だったデフォルト」が、「無秩序なデフォルト」になる可能性が残っているということだ。3月にもしギリシャがデフォルトになれば、それこそ世界の金融市場がどのようなパニックになるか分からない。そうなれば金融が収縮し、日本経済だけでなく世界経済への影響は計りしれない。2008年の再現、あるいはそれ以上のことにもなりかねないのである。
日本の2011年の貿易収支は赤字になったとされ、産業構造の変化から当面は赤字が続くのだという。これまでの海外投資による所得収支が年間10兆円を超える黒字であるために、当面、日本の経常収支が赤字になることはないだろうが、その状態もいつまで続くか分からない。もしイランをめぐる情勢が緊迫して、部分的に軍事衝突でも起きれば、石油価格が暴騰し、貿易赤字は大幅に拡大する。
海外のヘッジファンドは日本の経常収支が赤字になるタイミングを狙っている。それは国の財政赤字を国内でファイナンスできないことを意味しているからだ。もしその状態で日本国債を売り浴びせられたら、ひとたまりもあるまい。日本の地銀なども損失を抑えるためにこぞって売りに回るからである。
問題はそのタイミングがいつかということだ。先日あるテレビ番組で、東大大学院の伊藤隆敏教授は、日本にどれくらいの猶予があるかを問われて、「5年」と答えた。しかし金融コンサルタントの倉都康行氏は「そんなに余裕はない。今年、来年という話ではないだろうが」と語った。
その日がいつ来るのかは分からないにしても、少なくとも指折り数えられるほどの時間しか残されていないことだけははっきりしている。そして日本経済のハードランディングを避けるには、現在の「一体改革」などでは到底間に合わないことも事実だ。
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