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なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
NHKが政府に原子力災害対策本部で行われた議論の議事録の公開を請求したところ、議事録が作成されていなかったことが判明した。一国の政策を決める場で、記録を取らないのはコンプライアンス違反だと、筆者は指摘する。
米国の場合は
一国の政策を決める場で、記録を取らないというのはまさにコンプライアンス違反だと思う。米国のキッシンジャー元国務長官は著作の中で、自分が行った「電話外交」の録音をすべて書き起こし、それを国立公文書館に渡したとしていた。さまざまな判断や決定は、結果的に正しいこともあれば、間違っていることもある。さらに時間が経てば、正しかったことも誤りになってしまうこともある。そして何よりも肝心なことは、すべての記録は次によりよい判断や決定をするための材料になるということだ。
米国のホワイトハウスは、会議などは徹底して録音されているはずだ。そして記録の削除は相当の理由がなければできないはずである(ニクソン大統領の執務室で行われた会話の録音テープが、大統領弾劾の1つの有力な証拠になった)。
菅首相は「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」という主旨のことを言ったが、議事録がないという事実で評価は大きく下がると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである。
こうなったら、政府事故調も国会事故調も当時の出席者のすべてのメモを回収し、徹底的に「尋問」してでも記録を作らなくてはならないと思う。歴史的な大事件の重要な資料がないなどという恥を後世に残してはならないのである。
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