エルピーダ破たんから、金融小説のトリックを考えてみた:誠 Weekly Access Top10(2012年2月18日〜2月25日)
エルピーダメモリの会社更生法申請で暴落した同社株。その値動きを見ていて、小説などに使ってはどうかというトリックが頭に浮かんだ。
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先週最も読まれた記事は「日本に生まれたことの幸運さ」。2位は「三洋を買収した、パナソニックの“誤算”」、3位は「若者が正規雇用に就けない社会の行く末とは」だった。
金融小説のトリックを考えてみた
2位の「三洋を買収した、パナソニックの“誤算”」で取り上げたパナソニックに限らず、シャープやソニーなど電機業界各社が厳しい決算を発表している。そんな中、2月27日にはDRAMの製造販売を行うエルピーダメモリが会社更生法の適用を申請して、話題を集めた。
エルピーダメモリ株の2月27日の終値は330円だったのが、この申請を受けて2月28日はストップ安で場中に寄り付かず、制限値幅が撤廃された2月29日に5円で寄りつく結果となった。同社株は、わずか2日で価値がマイナス98.5%となったことになる。
日本航空や武富士など、会社更生法を申請した企業の株価が一気に1ケタにまで落ち込むのは珍しくない話。会社更生法を申請する企業にはだいたい予兆があるとはいえ、逆張り狙いの投資家にとっては恐ろしい出来事だろう。
しかし、筆者はこういう値動きを見ていて、「こんなトリックが小説などで使えるのではないか」と思ったことがある。それは、次のようなもの――。
明里「あなたは天才トレーダーね。30万円を元手に、わずか1年で10億円もの資産を築くなんて」
貴樹「まあね。ふむ、今日はジャパンメモリの株が安いな。でも、この会社は国がプッシュしているから必ず上がるはず。よし、今の株価は10万円だから1万株買おう!」
〜数日後〜
テレビ「本日、ジャパンメモリ社は会社更生法を申請。自力再建を断念し……」
貴樹「何だと! 株価は……5円!? 10億円(10万円×1万株)が、一夜にして5万円(5円×1万株)になってしまったのか。家賃も払えないじゃないか」
明里「お金のないあなたに魅力なんてないわ。さよなら」
貴樹「何てことだ。俺はすべてを失ってしまった。トレーダーとして生活してきたから、普通に就職するのも難しい。もう死ぬしかないのか」
〜数日後、日本海にそびえる崖にて〜
貴樹「浮き沈みの激しい人生だったなあ。最後に、俺を苦しめた証券口座をもう一度見ておくか……。む!? 口座に1億円が入っているぞ。なぜだ?」
……規模は違えど実際にありうるシチュエーションだと思うのだが、このからくりは譲渡益税の還付。証券会社に特定口座(源泉徴収あり)を開設していると、利益の10%が譲渡益税として自動的に引かれる。つまり30万円から10億円まで株式投資でもうけたなら、1億円ほど譲渡益税を納めている計算になる。
しかし、10億円の損失を出すと利益を相殺できるので、その納めた1億円が還付されるのである。証券会社によっても異なるが、年内の利益は自動的に相殺され、3年以内の利益は確定申告をすると相殺できる。
やられたと思ったら、意外とやられていない演出ということで、小説などで使ったら面白いんじゃないかなあと妄想しているところである。ただ、劇的ではないし、若干分かりにくいので、カタルシスには欠けてしまうとは思うが……。
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