他人のせいにする能力:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
何か問題が起こった時、「運が悪かった」「あいつのせいだ」と思う人と、「自分のせいだ」と思う人がいます。一見、後者の方が謙虚で好感が持てそうですが、ちきりんさんは自分を痛めつけ過ぎないように「理由を外に求めること」も大切だと説きます。
自分を守る能力
小中学生時代、算数や数学の参考書の問題を解いた後、巻末の解答ページを見て答え合わせをしますよね。付き合わせた答えが異なっていたら、「99.99999%、自分が出した答えが間違っている」わけですが、中には「巻末に書いてある答えが間違っている!」と考える人もいます。
にわかに信じがたい話かもしれませんが、こういう人は実在するんです。なぜ実在すると断言できるかというと……昔、ちきりん家には、こういう人が5人もいたからです。
そこまで図々しくなくても、何かに失敗した時に「なぜ?」という言葉が頭に浮かぶ人は少なくないでしょう。
この場合の「なぜ?」という言葉には、2つの意味があります。1つは純粋に「失敗の理由を知りたい」という意味ですが、もう1つは「自分はちゃんとやったのに、なぜ結果が良くないの?」という不満がこもった疑問です。
実際には「自分がちゃんとやってなかったから」失敗しただけでも、人は無意識に自分をかばいます。「自分の努力は報われて当然」という気持ちが「なぜ?」を呼ぶのです。
レシピ通りに料理を作ったのに、食べた人に褒めてもらえない場合も、“外責的”な人は「選んだレシピがダメだった」と思うか、「あの人(食べた人)は、あまり味覚が鋭くないよね」などと考えます。
実際には「あんたの料理が下手なだけ」という場合が大半ですが、自分ではそうは思いません。外責的な人の「自分をかばう力」はなかなかあなどれない、かなりすごい能力なのです。
そして、こういった能力こそが、まさに「自分を守る能力」だとも言えます。もともとのレシピがイマイチだったのに、おいしくない料理を目の前に「私は何をやってもうまくいかない人間だ。本当に私はダメだ」などと落ち込んでいたら、とてもつらいですよね。
仕事でも同様で、なかなか結果が出ない時、すべてを自分のせいにしていたら、自分で自分を痛めつけてしまいます。
あまり思い詰めず、「自分を守る能力」を身に付けるという意味でも、「結果の良し悪しの原因は、自分の中にも外にもあり得るのだ」と、日ごろから意識しておくと良いでしょう。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
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