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コラム

“作られたスクープ”の裏にあるもの――それは企業の巧妙な手口相場英雄の時事日想(3/3 ページ)

電車の中吊り広告で「独占スクープ!」といった刺激的な見出しを目にした人も多いはず。しかしこの「スクープ」の中には、読者を煙に巻くようなものも含まれている。それは企業がからんだ“作られたスクープ”だ。

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 なぜ口の堅い書き手が必要なのか。

 当該の大手企業は、ライバル企業のシェアを劇的に落とすために、その企業の主力商品の重大な欠陥を発見した。当該の欠陥を自分が明らかにすると世間的に波風を立てる結果になるため、これを記者が丹念に取材で掘り起こして得たネタのように偽装しようと試みているわけだ。

 もちろん、取材費用はこの企業が全額負担。ただし、ライバル社に気配を察知されては困るので、“口の堅い”人材が必要だ、というわけだ。

 この企業が理想とする人材を確保したかは確認していないが、仮にこの試みが成功した際は、ライバル社は企業存続の危機に直面するのは必至だと筆者はみる。

 現在、堅いテーマの作品が売れない時代、言い換えれば“ノンフィクション不況”が深刻化する業界内で、この誘いに乗る記者、あるいはフリーのジャーナリストは少なくないと予想する。

 同時に、企業戦略の巧妙化に舌を巻いた次第。筆者もこの人材募集を知らずにこのテーマが世に出た際は、先の「掘り起こし調査報道型」のスクープとして煙に巻かれていたはず。多くの読者が目にするスクープは、さまざまな道筋をたどったのち、届けられる。

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