貸切バス事業者の8割が赤字、人員削減や賃金切り下げも
帝国データバンクの調査によると、貸切バス事業者の8割以上が赤字であることが分かった。規制緩和で競争が激化した結果、現場の勤務状況も悪化しているようだ。
帝国データバンクは5月9日、貸切バス事業を営む企業の経営実態調査結果※を発表。2011年に黒字だった企業は16.1%と、道路運送法改正による規制緩和があった1999年の19.8%より3.7ポイント低下していることが分かった。また、2011年の年商を前年と比較すると、減収した企業が374社(58.6%)と、増収した企業の264社(44.6%)を上回った。
年商規模別に見ると、「5億円未満」が852社(87.9%)と最も多く、全体の9割弱が小規模事業者であるようだ。また、「5億〜10億円」は65社(6.7%)「10〜50億円未満」は49社(5.1%)、「50億円超」は3社(0.3%)だった。2011年の1社当たりの年商は2億8130万円で、規制緩和前の1999年の3億6120万円に比べて22.1%も減少したことになる。
1999年の法改正で、貸切バス事業が免許制から一定の基準を満たせば誰でも参入できる許可制に移行したことで、新規参入が容易となり、バス会社のツアーバス事業参入が相次いだ。これにより1999年には2336社だった貸切バス事業者数は、2010年には4492社と約1.5倍になっている。
帝国データバンクでは「事業者数の増加は受注競争の激化や顧客からの値引き要求を招いた。また、多くの企業は経営費の過半数を占める人件費を抑制するために、人員削減や運転手の賃金水準の切り下げを実施。結果として長時間労働などが横行、運転手の勤務状況は悪化の一途をたどった」と分析する。
4月29日、群馬県内の関越自動車道で高速バスが防音壁に衝突、7人の死者を出す事故が発生した。運転手への事情聴取により、劣悪な勤務環境や事業者のずさんな管理が明らかになりつつあるが、帝国データバンクは「過当競争で低収益に苦しむ現状の業界環境を改善しなければ、根本的な解決にはつながらない」としている。
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