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人はなぜ“だれかの体験”に金を出すのか?――クラウドファンディングが育てるもの:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
スロバキアの学生が描く原発ドキュメント映画、被災地・石巻での神輿復元プロジェクト。日本発のクラウドファンディング「キャンプファイヤー」が灯すのは、人と人を結ぶかがり火だ。
人と人を群にする共感消費マーケットが育つ
プロジェクトを起こす側からも見てみよう。サクセス率が高い分野は社会貢献。福島の除染作業、被災地での教育支援、焼きもの教室、疎開保養など、みんなを集めて何かをするイベントが目立つ。おもしろいのは「雄勝神輿(参照リンク)」。石巻市の神社の本殿の被災した廃材を使って神輿を作った。
お祭りは地元の氏子や町民が寄進して執り行われる地域限定イベントである。それがこのプロジェクトでは全国どこの人でも支援できて、別の町に住む神輿職人の孫が作り、神輿や提灯にパトロンの名前が入る。神社、氏子、地元民だけでなく、ネット上の人々を巻き込む“群れ”となり、神社のかがり火のような“キャンプファイヤー”が灯された。
最後に石田さんに聞こう。こういう消費は増えますか?
「増えるというか当たり前だと思います。キャンプファイヤーでは、プロジェクトを見て『モノ』や『コト』に共感した人が、その背景を共有しながら直接的な支援ができます。これからは、手に入れたいモノやコトの背景にある『出来事』や『考え方』も一緒に消費する方が豊かだと感じる人が増えてくるのではないでしょうか」
キャンプファイヤーのサクセス率は70〜80%だが、今後は限りなく99.99%に近づけていきたいという。共感消費のマーケットを創るキャンプファイヤーを応援しよう。
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