企業の公式アカウントは、どのくらい拡散されているのか:ソーシャルインフルエンス(3/3 ページ)
日本におけるTwitterアカウントで、フォロワー数が最も多いのは、ソフトバンク社長の孫正義氏、次いでガチャピン、タレントの有吉弘行氏と続く(2012年3月現在)。一方、企業が運営する公式アカウントはどうだろうか。上位ランキングをまとめた。
そもそも、多くの企業公式アカウントが投稿する情報はキャンペーン告知やプレスリリース情報などで、わざわざクチコミで広げる価値のある情報ではないことが多い。だから、RTはほとんど発生しない。一般的な企業公式アカウントのツイート1回当たりRT率は0.01〜0.1%程度だ。1万人のフォロワーがいても、1.10人くらいしかRTしない。一般的なTwitterユーザーのフォロワー数は約60人だから、仮に10人がRTしてくれた場合のツイートリーチは10RT×60人(平均フォロワー数)=600人だ。この場合、1万人(フォロワー数)+600人(2次伝播者)=1万600人(グロスツイートリーチ)。アーンドインプレッション率6%、対フォロワー比は106%となる。
TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが持つ本来の強みには3つある。
・拡散性 Spreadable
・共有性 Sharable
・常時性 Always On
情報が次から次へとまるでウイルスのように伝播していく動的な拡散性、共感したり価値ある情報を友人や知人とすぐさまシェアすることができる共有性、そして、いつも隣で一緒にいることができる常時性である。しかし、多くの企業公式アカウントが生かせている強みは、「常時性」だけなのだ。拡散性や共有性が効いていない。言葉は悪いが、「Twitterでメールマガジンを発行している」に過ぎないのである。
メルマガ的な公式Twitterアカウントの全ては意味がないと言うつもりはない。数万〜数十万人規模のフォロワーがいれば、それだけでも価値のある自社メディアとして機能する。ただ、せっかくソーシャルメディアを活用するのであれば、常時性だけでなく、拡散性や共有性の強みが発揮される運用じゃないともったいない! と言いたいのだ。
(つづく)
著者プロフィール:
池田紀行
株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。マイクロソフト、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、Z会などのソーシャルメディアマーケティングを手掛ける。近著『キズナのマーケティング』(アスキー新書)。
本田哲也
ブルーカレント・ジャパン株式会社代表取締役。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。国内外の大手メーカーなどを中心に戦略PRの実績多数。近著『新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』(アスキー新書)。
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