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コラム

「日経VS. 文春」騒動の裏にある、週刊誌の取材力相場英雄の時事日想(3/4 ページ)

日本経済新聞社と文藝春秋の間で、トラブルがあった。新聞社トップのスキャンダルを週刊文春が報じ、新聞社側は発行する出版社を訴える方針を示した。事の真偽は別にして、今回は週刊誌の取材力にスポットを当ててみる。

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 数年前のこと。某大手企業の不正を知った私は、大手週刊誌のベテラン編集者にその旨を伝えた。副編集長をヘッドに外部ライター3人、カメラマン3人、そして私による取材チームが1日で編成された。

 ネタを持ち込んだ私は、不正のキモである内部資料を大量に保有していたものの、キーマンの名前と人柄程度しか知らなかった。だが、取材チームは迅速に動いた。

 チーム編成後約半日でベテランライターがキーマンの自宅住所を突き止めた上、週に2〜3度の割合で訪れる高級クラブや愛人宅まで炙(あぶ)り出した。

 その後は、張り番と呼ばれるカメラマンと編集者のコンビが複数編成され、24時間体制でキーマンを1週間ほど追い続けた。

 この間、私は編集部のスタッフと共同で記事を執筆。あとは動かぬ証拠であるキーマンの決定的な写真を待つばかりとなった。

 また、1回目の告発記事を掲載したあと、不正を冒していたキーマンとその企業から訴えられることが予想されたため、一番肝心のネタは第2弾、第3弾とそれぞれにトドメを刺すような形で掲載することも決まっていた。

 残念ながら、このネタは諸事情で日の目を見ることはなかったが、元通信社の記者だった私は、週刊誌の機動力とチームワークによる取材力の凄まじさを思い知ることになったのだ。

週刊誌を創る側の“編集者根性”

 大手出版社の週刊誌、あるいは写真週刊誌はどこも同じように機動力が高い。また、私が取材チームの一員となった数年前よりも「格段に機材の精度が向上した」(某週刊誌副編集長)。

 機材とは、主にカメラや録音機材のこと。テレビドラマや映画で登場するように、一目でカメラマンと分かる格好で張り番をやることもあるが、最近ではスパイ映画も顔負けの潜行取材を行うカメラマンは少なくないという。ペン型、あるいはバッグに仕込んだカメラでもバッチリと対象者の鮮明な画像が撮れるようになったのだ。

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