対立軸のなくなった政党政治はどこに向かうのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
増税法案を通すためにマニフェストを捨て、自民党などの野党の主張を受け入れた野田首相。与党と野党との違いがなくなりつつあるが、次の選挙では何が対立軸となるのだろうか。
何を基準にどの政党を選べばいいのか
税金で野合し、社会保障改革を先送りしてしまった民自公はいったい次の総選挙で何を対立軸にするのだろうか。民主党の側は、いまさら社会保障分野で最低保障年金とか、高齢者医療制度の廃止を掲げてみても始まるまい。何しろ税金で最低保障年金を支払うというのは財政的にも無理があるし、思想的にもおかしな話だからである。高齢者医療制度の廃止にいたっては、それを廃止してどうするかというところで誰の賛同も得られそうにない話だ(民主党の支持母体である労働組合も、年寄りを引き受けるという話には首を縦に振ることはできまい)。
ということは、有権者にとって何を基準にどの政党を選ぶべきかが分からないということになる。二大政党制がいいかどうかは別にして、民自公とそのほかの野党という選択肢は国民にとってあまりにも不幸だ。それはいわゆる55年体制にも似て、そのほかの野党の言うことにはあまりにも現実味がなく、民自公の疑似連立のやることには何の新しい発想もなく、既得権益者への懐柔ということになりかねないからだ(55年体制と違うところは、民自公の場合、既得権益者の中に労働組合が入ることだろうか)。
こうなったらいっそのこと政治をガラガラポンしたらどうかとも思えるが、何を軸に誰が新しい政党を組織するのかということになると、さっぱり取っかかりが見えない。民主党のある幹部が「もう政治家を辞めようかと思う」と言っていたのを思い出す。
欧州でもやはり政治が行き詰まって、経済問題についてイニシアティブを発揮できない状況が続いている。ドイツのメルケル首相は「前門の虎、後門の狼」状態。ギリシャは危うくポピュリズムに乗っ取られそうになった。ナショナリズムを旗印にする極右が勢力を伸ばしているのは、フランスだけではなく多くの国に見られる現象だ。
景気の先行きに明るさが見えず、政治的な閉塞感が強まる時、政治は危険な方向に向かう。それも歴史の示すところだ。それを打ち破るリーダーが果たして現れるのかどうか、今年末から来年にかけての政治は、日本の将来を分ける重要な分岐点になると思う。
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