アメコミ市場は日本の10分の1、世界のマンガ市場を見る(後編):アニメビジネスの今(3/3 ページ)
出版物販売の3冊に1冊がマンガという日本。一方、海外では、アメコミが有名な米国でさえも市場規模は日本の10分の1程度に過ぎないようだ。
米国以外のコミック市場
日本や米国以外のコミック市場はどうなのか。『出版年鑑』や日本貿易振興機構が発表している「コンテンツビジネスレポート」をもとに各国のコミック出版状況をまとめてみた。
フランス
フランスでマンガは「バンド・デシネ(描かれた帯≒続きマンガ)」と呼ばれており、最近は日本文化の祭典であるJapan Expoの盛り上がりも知られている。2009年の書籍全体売上は28億2900万ユーロで、そのうちコミックが占める割合は8.7%で2億4612万ユーロ(1ユーロ=100円だと約246億円)。ただし、コミック新刊の3分の1強は日本のマンガである。
英国
2009年に英国で販売された書籍の販売数は7億6300万冊。そのうちコミックは181万3771冊なので、シェアはわずか0.24%である。コミック販売数のうちわけをみると、39%が「スーパーマン」「スパイダーマン」といったアメコミ、33%が日本のマンガとなっている。
スペイン
スペイン出版社連盟発表によると、2010年スペインの出版市場の総売上高は28億9080万ユーロ(前年比7.0%減)で市場規模として近年横ばい傾向。このうちコミックの売上高は8523万ユーロ(同7.5%増、1ユーロ100円として約85億円)と他分野が縮小する中で例外的な伸びを示してはいるものの、出版売上高全体におけるシェアは2.9%に過ぎない。
ただし、スペインの場合、コミックは(1)アメコミ、(2)欧州製(『タンタンの冒険旅行』や国内作家の作品)、そして(3)マンガ(ほとんどが日本製。近年は韓国のマンファ、中国のマンワも参入)の3つのジャンルで構成されているが、ほとんどが外国製であるため、コミック部門は基本的に翻訳出版事業となっている。
韓国
韓国は1990年代中盤以降、マンガやアニメの教育に力を入れるようになった。ここ数年、発行部数を落とし続け、全盛時の半分以下となっていた韓国のマンガだが2011年は前年比3.7%増とわずかに持ち直した。その2011年の韓国における新刊書の発行部数は1億955万部で、その8.4%に当たる916万部がマンガだが、その中で日本のマンガが占める割合は数パーセント程度とみられる。
――このように各国のコミック市場を見ていくと、前編で解説したように日本のマンガ市場が突出しているという意味が改めて理解できるだろう。マンガが世界に誇る日本の文化であることをもっと認識してもいいのではないだろうか。
増田弘道(ますだ・ひろみち)
1954年生まれ。法政大学卒業後、音楽を始めとして、出版、アニメなど多岐に渡るコンテンツビジネスを経験。ビデオマーケット取締役、映画専門大学院大学専任教授、日本動画協会データベースワーキング座長。著書に『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)、『もっとわかるアニメビジネス』(NTT出版)、『アニメ産業レポート』(編集・共同執筆、2009〜2011年、日本動画協会データーベースワーキング)などがある。
ブログ:「アニメビジネスがわかる」
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