5年ぶりに制作分数が増加、レポートから見るアニメ業界の現状:アニメビジネスの今(5/5 ページ)
リーマンショック以降、4年連続で減少していたテレビアニメの放映分数。しかし、このほど発表された「アニメ産業レポート2012」によると、2011年は増加に転じたという。今回は「アニメ産業レポート2012」の内容を詳しくお伝えする。
景気に対して上昇感の出てきたアニメ業界
アニメーション産業レポートでは今回から「景気感」についてのアンケートを行うことにした。これは、直接アニメを製作・制作している企業が感じている景気に対しての率直な所見を知りたかったからである。これがアニメ業界の実態を反映しているかどうかは定かではないが、事業者の本音が垣間見られるのではないかと思う。
その統計が次表である。これによると、2010年〜2011年の景気感に対し、「良くなっている」がゼロ、「やや良くなっているが」が9.7%しかない。「変わらない」も29%。一方、前年度より「悪くなっている」と「やや悪くなっている」で合計61.3%と3分の2弱にもなった。この傾向は2007年からの景気下降の印象が強かったためと思われるが、実際には数字は反転し始めていた。
そして、2011年→2012年では、前年度からの数字の回復を受けてか「良くなっている」はないものの「やや良くなっている」が9.7%から19.4%へとアップしている。「変わらない」も3.3ポイントほどアップ。反面、「悪くなっている」「やや悪くなっている」の合計は61.3%から48.3%へと縮小した。業界の景気回復が実感されてきたのではないか。
さらに、今年から来年の景気感については「良くなっている」「やや良くなっている」はわずかながら増えて20.6%となっている。「変わらない」が12.5ポイントの44.8%と大幅にアップ。それに対し、「悪くなっている」「やや悪くなっている」の合計がさらに13.9ポイント減って34.4%となった。
動画協会アンケート:景気感についての回答(「アニメ産業レポート2012」より)
景気感 | 2010→2011年 | 2011→2012年 | 2012→2013年 |
---|---|---|---|
「良くなっている」 | 0(0.0%) | 0(0.0%) | 1(3.4%) |
「やや良くなっている」 | 3(9.7%) | 6(19.4%) | 5(17.2%) |
「変わらない」 | 9(29.0%) | 10(32.3%) | 13(44.8%) |
「やや悪くなっている」 | 17(54.8%) | 10(32.3%) | 5(17.2%) |
「悪くなっている」 | 2(6.5%) | 5(16.1%) | 5(17.2%) |
合計 | 31(100.0%) | 31(100.0%) | 29(100.0%) |
次図を見ると分かるが、2010〜2012年の3年間で「変わらない」「良くなっている」「やや良くなっている」という現状維持以上の数字は38.7%→51.7%→65.4%、片や 「悪くなっている」「やや悪くなっている」は61.3%→48.3%→34.4%とほぼ半減した。もちろん、この「景気感」と実態の景気とは異なるであろうが、アニメ業界に景気の上昇感が出てきたことは非常に期待できることである。
増田弘道(ますだ・ひろみち)
1954年生まれ。法政大学卒業後、音楽を始めとして、出版、アニメなど多岐に渡るコンテンツビジネスを経験。ビデオマーケット取締役、映画専門大学院大学専任教授、日本動画協会データベースワーキング座長。著書に『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)、『もっとわかるアニメビジネス』(NTT出版)、『アニメ産業レポート』(編集・共同執筆、2009〜2011年、日本動画協会データーベースワーキング)などがある。
ブログ:「アニメビジネスがわかる」
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