安倍首相の地元で見えた、アベノミクスの未来:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
参院選の前哨戦といわれる山口補選で自民新人の江島潔氏が圧勝した。今や圧倒的な支持率を誇る首相の地元で、「安倍の子分」なんて呼ばれる人が出て負けるわけがない。ただ地元経済に目を向けると、アベノミクスの未来が見えてくるのだ。
「エジマノミクス」の副作用
他の地域の人からすると、「ふぐ」に「関門海峡」ぐらいのイメージしかないだろうが、下関というのは、かつて日本国内でも極めて斬新な経済政策をとった自治体として知られている。
分かりやすく言うと、公共事業によるバラまきと、大企業などが経済活動をしやすい「優遇」だ。
例えば、105億円のゴミ焼却施設、104億円の商業施設、60億円の「リサイクルプラザ」、26億円の屎尿処理施設、65億円の社会教育複合施設など、次々と大型の公共事業をたちあげた。
と、ここまではありがちな話だが、下関市が異彩を放つのは、「地元業者には徹底的に仕事をまわさない」というユニークな手法をとったことだった。
ゴミ焼却炉、商業施設なんかの高額なものを神戸製鋼と一時期話題となった西松建設へ。屎尿処理施設はクボタなど。社会教育複合施設にいたってはかなり露骨で、地元企業よりも9億円も多くふっかけた三菱商事が落札している(後に不正発覚により失格)。あまりに露骨にやるものだから、公正取引委員会の調査が入って、クボタの社員がパクられたこともあった。
そんなダイナミックな経済政策を推進したのが、安倍事務所の完全バックアップのもと4期14年の長期政権を務めた江島潔さんだ。「エジマノミクス」は稼がせてくれる県外の大企業にはえらく好評だったが、どでかい「副作用」もあった。
『統計しものせき』によると、江島さんが初めて市長になった直後の1996年、市内では1万6481の事業所と、14万2758人の従業者がいた。それが4期目となる2006年には、事業者は1万3319、従業者も12万609人と激減している。
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