記事を載せたメディアに責任はないのか? 繰り返す投資詐欺話:相場英雄の時事日想(1/3 ページ)
米金融業者MRIインターナショナルが顧客から集めた資金の大半を消失させた――。ずさんな運用が“お金を溶かした”典型例といえるが、このような怪しい投資話を記事にしたり、広告掲載を行ったメディアに責任はないのだろうか。
相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール
1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
先週、主要メディアで悪質な投資詐欺に関するニュースが報じられた。米金融業者MRIインターナショナルが顧客から集めた資金の大半を消失させた、というもの。昨年刑事事件化したAIJ投資顧問の一件と同じく、ずさんな運用が“お金を溶かした”典型例といえる。MRIに関する詳報は他稿に譲るとして、今回は事件をより深刻化させた一因を考えてみる。怪しげな投資話を記事にしたり、あるいは広告掲載を行ったメディアの責任だ。
記念品たっぷりの記者会見
まずは、一連の出来事について触れてみる。
MRIインターナショナルは米ネバダ州に本社をかまえ、米国の診療報酬債権をベースにした金融商品を組成し、日本で販売していた。主たるターゲットは、長引く超低金利に嫌気がさした日本の個人投資家で、運用利回りは年6%超をうたっていた。
同社は1998年に日本に進出。主要メディアの報道によると約8700人の顧客から1300億円超の資金を集めていたというが、証券取引等監視委員会の調査により、その大半を消失していることが判明した。
新規で集めた資金を既存顧客の配当に回していた実態もあったもようで、この点からも自転車操業を強いられていたAIJ投資顧問の事件と様相が極めて似ている。金融庁は金融商品取引業者の登録を取り消す方針だという。
MRIの一件が主要メディアによって報じられた直後、もしやと思い、私はかつての取材メモの類いをチェックしてみた。
MRI設立直後の1990年代後半、やはり私は同社の会見に出席していた。日本で新商品の発売を検討している、というのが会見の主題だった。
都内の一流ホテルの宴会場に会見場がセットされ、私が所属していた通信社のほか、主要在京紙、経済誌の記者ら約20人が出席した。
自身のメモには記されていなかったが、同社関係者のほか、会見をセットした広報代理店関係者が愛想良く対応していた記憶がある。
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