記事を載せたメディアに責任はないのか? 繰り返す投資詐欺話:相場英雄の時事日想(2/3 ページ)
米金融業者MRIインターナショナルが顧客から集めた資金の大半を消失させた――。ずさんな運用が“お金を溶かした”典型例といえるが、このような怪しい投資話を記事にしたり、広告掲載を行ったメディアに責任はないのだろうか。
配布された資料は既に廃棄してしまったが、豪華な装丁の資料本が配布された。この中には、米国の診療報酬の仕組みや、これを回収する専門的なスキーム、そしてこれらを背景にどのようにして診療報酬債権が金融商品になり得たかの説明があった。
会見の質疑応答で、私はなぜ日本独自の金融商品なのかを聞いた記憶がある。それほど魅力的かつ先進的な商品ならば、真っ先に米国の機関投資家や富裕個人投資家に販売するほうが、手間がかからないと考えたからだ。
だが返答は、超低金利に苦しむ日本の投資家向けに独自開発した、という主旨が繰り返されたのみ。
この段階で、私は担当記者としてボツにすることを決めた。会見が終り、記者クラブに戻ってから、新型の金融商品の組成に詳しい数人の専門家をつかまえて取材したものの、「米診療報酬債権を日本独自に供給する」ことへの合理的な説明ができないとの答えのみが返ってきたので、管理職であるデスクにその旨を告げて、ボツを決めた。
同業他社が同じ会見場にいたので、1社だけネタを落とす“特オチ”扱いとならないよう、怪しい商品を紹介する提灯記事は書けないと説明し、納得させたわけだ。
もう1つ、私がボツを決めた理由が別にあった。会見場を出る際、集まった記者たちに手土産が配られたからだ。高級な菓子折りとともに、超がつくほど高級な文具セットが用意されていたため、私はこれらを受け取らずに会見場を後にした。
土産などなくとも、ニュースバリューがあると判断すれば勝手に記事を書くのが記者の商売。それが露骨と言ってもよいほどの豪華な土産物である。皮膚感覚で“怪しい”と感じたことを記憶している。
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