女性をさらって「監禁」する男たちに、共通する「病」とは?:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
オハイオ州の民家で、3人の女性が10年間も監禁されていたというニュースが飛び込んできた。日本でも2000年に、新潟県の加害者宅で、小学4年生の少女を9年2カ月間も監禁していた誘拐事件があった。女性をさらって「監禁」する男性たちに、どんな共通点があるのか。
佐藤受刑者の手口
佐藤受刑者の人柄はひとことで言うと、「社会性ゼロ」である。
思春期の頃から病的な潔癖性となり、高校卒業後に数カ月だけ地元企業に勤めるもののすぐに辞め、「引きこもり」となった。友人は大袈裟な話ではなくひとりもおらず、会話をするのは同居していた母のみだ。
1日の大半を自宅2階にある自室で過ごし、たまに外に出かける時は、目的もなくひとりクルマを走らせるだけだった。
そんな引きこもり生活をはじめて7年、26歳になった佐藤受刑者は下校途中の女子中学生を草むらに連れ込んで現行逮捕されるが、初犯で反省もしているということで執行猶予となった。しかし、その1年半後、彼はさらに恐ろしい事件を起こす。ドライブ中に見つけたAさん(当時9歳)を誘拐し、2階に連れて9年2カ月間、8畳の部屋から出さなかったのである。信じられないかもしれないが、母はAさんの存在を息子が逮捕されるまで知らなかった。20年以上も2階に上がることを許されず、2階に続く階段を見上げるだけで、息子から“お仕置き”をされたからだ。
そんな男がゆえ、監禁の手口もカストロとはまったく異なる。
2002年から2004年までカストロに誘拐された女性たちは、階下や地下室で鎖につながれていたが、佐藤受刑者は少女を縛らなかった。カストロの家は南京錠だらけだったというが、こちらは鍵などない。
時には、彼女を家に残して、母と1日出かけることもあった。なぜそんなことが可能になったのかというと、「恐怖」で縛っていたからだ。
「お前の家は分かっている。もし逃げたら、お前の姉さんをさらってきてやる」
佐藤受刑者は9歳だったAさんに、何度も繰り返しこんな脅しをすることで、「逃げても無駄だ」という刷り込みをしていたのだ。
実際に、彼女が9年2カ月間過ごした「監禁部屋」に足を踏み入れたことがある。窓を開けると、目の前には児童公園があり、少年たちが野球をしていた。こんな状況にもかかわらず、AさんはSOSを発することなく、命じられるまま、佐藤受刑者の部屋でじっと帰りを待っていた。そういう意味では、カストロよりも何倍も卑劣であり、狡猾な犯行といえる。
関連記事
- 中国人とロシア人の「本音」がよく分かる、「逆さ地図」ってナニ?
日本海を中心に南北を逆さにした通称「逆さ地図」を見たことがあるだろうか。その地図を見ると、中国やロシアの「本音」が分かってくるのだ。 - サラリーマンを喰い尽くす、“タガメ女”ってナニ?
“タガメ女”という言葉をご存じだろうか。一部の人たちの間で話題になっているが、聞いたことがない男性はその女性の正体を知っておいて損はない。なぜなら無抵抗な男性を……。 - なぜマスコミはインチキをしても「ごめんなさい」と言わないのか
普通の企業ならば謝罪会見モノの不祥事が発覚しても、しれっとした顔でやり過ごしている業界がある。言わずと知れた、マスコミだ。なぜ彼らは意地でも頭を下げないのか。そこには一般人にははかりしれぬ“美学”があったのだ。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.