ゲームっぽさがテレビ番組との距離を縮めてくれた――「トルネ」開発陣に聞く(2/4 ページ)
「トルネ」や「ナスネ」という製品をご存じだろうか。家庭用ゲーム機「PlayStation 3」「PlayStation Vita」などと組み合わせて使うものだが、これがいわゆる“テレビ離れ”を引き戻すきっかけになるかもしれない。
トルネの機能で一番好きなのは?――それは「トルネフ」だ
トルネが面白いのは、なにもユーザーインタフェースだけではない。他の製品と決定的に違うのがソフト面、具体的に言うと「トルネフ」の存在だ。
トルネフとは、トルネ/ナスネのプロモーションを担当する“オウム”。「トルネチーム」に雇われたアルバイトという立ち位置なのだが、いたってまじめな「情報」を、とてもユルく紹介してくれる。
このトルネフ、Twitterアカウント(@tornev)を使ってトルネの情報や、明日放送される注目番組を積極的に発信している。これが、テレビの見方を少し変えてくれるエッセンスとなっている。
トルネでは、録画番組情報をゆるく共有する機能がある。例えば、トルネユーザーが録画予約/視聴している数をリアルタイムで集計する「トルミル機能」などは面白い。トルネフではこの機能を使い、人気番組や明日の録画予約が多い番組を毎日発信しているのだ。
やわらか系の情報Twitterアカウントであるが、テレビから若干離れてしまった筆者にとっては、とても有用な情報源だ(トルネユーザーがアニメ好きに偏っているのは好みが分かれるところだが)。これをトルネリリース直後から現在まで、毎日続けられていることはすばらしい。
トルネが登場した理由、開発陣に聞いてみた
そもそもトルネ/ナスネはどのように生まれたのだろうか。今回、トルネおよびナスネの開発に携わった渋谷清人さんと、西沢学さんとお話をする機会があったので、そのエッセンスを紹介しよう。
ソニー・コンピュータエンタテインメント 商品企画部 ハードウェア企画課 課長 渋谷清人さんと、JAPANスタジオ インターナルデベロップメント部 ゲームデザイングループ クリエイティブディレクターの西沢学さん
――当初、トルネはどのような販売層を狙っていたのでしょうか。
西沢さん: もともとは大学生や新社会人、30歳くらいのビジネスパーソンをターゲットに考えていました。実際に、そこを意識したアプリケーションのデザインを行いました。
渋谷さん: PC向けの小さなUSBチューナーが解禁されたころで、もともとゲームディレクターだった西沢がアプリを作りました。
――西沢さんはゲームデザイナーが本業なのですね
西沢さん: はい、トルネのアプリケーションも“ゲームのお作法”に則って作っています(筆者注:西沢さんはPS2「OPERATOR’S SIDE」、PSP「ニッポンのあそこで」などのディレクターとして活躍)。
渋谷さん: レコーダーのユーザーインタフェースで、BGMが付いているものはなかなかないですよね。レコーダーを作っていないチームだからこそ、出てきた発想だと思います。
西沢さん: 録画機能を持つアプリケーションを作るとしたら、どんな機能を持つべきか。いろいろなアイデアが出てきました。その中には最終地点が遠いものも多く、ひとつずつアップデートで対応しているところです。アップデートを頻繁にやってしまうと、ユーザーからの期待値も上がって後に引けなくなりますね(笑)。
渋谷さん: そもそも、PS3をずっと使ってもらいたい、まずは立ち上げてもらいたいという気持ちがあります。トルネのアプリはユーザーを飽きさせないよう、進化しています。
西沢さん: レコーダーと同じ土俵では戦いたくないんです。トルネでは、カタログスペックに表れない応答性や手触りを大事にしています。ここは比較表のマルバツでは表現できないので、ぜひ、みなさんに触ってみてほしい部分です。
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