ゲームっぽさがテレビ番組との距離を縮めてくれた――「トルネ」開発陣に聞く(3/4 ページ)
「トルネ」や「ナスネ」という製品をご存じだろうか。家庭用ゲーム機「PlayStation 3」「PlayStation Vita」などと組み合わせて使うものだが、これがいわゆる“テレビ離れ”を引き戻すきっかけになるかもしれない。
「テレビ番組」と「ゲーム」――視聴時間の奪い合い
――私もそうなのですが、テレビを持たない人、見ない人が増えています。トルネ開発チームとテレビの係わりはどのくらいなのでしょうか?
西沢さん: ゲーム開発者なのでゲームが大好きで、いままではゲームをやっている時間の方が長かったんです。でも、このトルネ開発のためにテレビも見なくてはならなくなりました。いまではトルネユーザーと同じく、アニメ番組をよく見るようになりました。そうしたら、テレビ向けの情報というものは本当に見づらかったのだということが分かったんです。例えば、番組表の見方も分からない。
渋谷さん: 私はアニメ番組は見てないですが、トルネの「トルミルランキング」を活用して、みなさんが見ている番組を見るようになりましたね。
西沢さん: トルネチームはソフトウエア開発だけでも20人くらいの規模ですが、テレビに詳しい人がたくさんいます。なぜなら、テレビのお作法や許諾関連に詳しくなければいけないから。この点については、ソニーのBlu-rayレコーダーチームとも協業しました。だから、トルネは多くの「テレビスペシャリスト」が携わったプロジェクトといえます。
「トルミル」の数値についても、もっと遊べる要素をいろいろと考えていましたが、本質をシンプルにするために削って削ってこのようになりました。例えば、トル数でソートして表示しても、数値自体はちらりと見えるのみにしています。トル数でソートするとこのように……アニメばかりになりますね(笑)。実はこのあたり、アニメファン以外からの要望もあって、ジャンルに「アニメ/特撮以外」も用意しています。
気になる「トルネフ」の存在は?
――ところで、トルネの魅力の1つはアルバイトの「トルネフ」と考えていますが……
西沢さん: はい(笑)。トルネフは、「Twitterを使ったプロモーションをやるべきだ!」と思い立った私が勝手に企画を進めました。トルネでは番組予約情報を数値として持っているので、「トル数」などを告知するのにいい方法はないか、ということから始まりました。いまでは、トルネのアップデート情報の告知や“リーク”を含め、発信しています。
トルネフの活動は、トルネのリリースから3カ月たった2010年6月から始まっています。3年前ですと、Twitterはいまほど盛り上がっていないころでしたが、当時のマーケティング担当と話し、「ちゃんとしたキャラクターを作って、それを通じて発信しよう」と決めました。
渋谷さん: トルネフは毎日、365日活躍しています。本人はつらそうですね(笑)。トルネを「ゲームのアプリケーション」と考えると、いろんな遊びを加えることは突飛なことではないと考えています。このあたりは、ゲームディレクターならではの感覚かもしれません。
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