エグゼクティブコンサルタント、森本千賀子さんに聞く――「愛される経営者像」とは?(2/3 ページ)
転職エージェントとしてリクルートグループの営業MVPを15回受賞、常にトップを走り続けるスーパーウーマン、森本千賀子さん。多くの経営者から「よき相談役」として公私ともに頼りにされている彼女に、愛されるトップ像や良い組織の姿を聞いた。
社員が持つ能力の120〜130%のポジションやミッションを与える
編集部 そうした会社では、具体的にトップはどういった働きかけをしているのでしょうか?
森本 例えば、ある営業の社員がいます。彼は営業畑ではそれほど実績が上げられなくても、別の分野だったら潜在能力が開花してものすごく活躍できる……。こうした例は山ほどあります。個人の適性をトップが見抜けるかどうか、そして、そういうチャレンジを会社としてリスクを負ってでもやらせてあげられるかどうか。それは大きな賭けでもあると思いますが、成長している会社は必ずやっています。
編集部 森本さんが実際に見てきた会社での例はいかがですか?
森本 若い人たちが管理職、役員になっている組織の例を挙げましょう。これは、その会社の最年少役員との会話の中から出てきたものです。自分がトップから抜擢された理由は、その職務を全うできるからではない。「この人だったら必ず成長してくれる」「足りない能力を努力して補ってくれる」と期待されているからだということを認識していました。だから、今足りない部分をできるだけ早く補う努力をしようとしていますし、トップもそうした行動を期待していることが分かりました。
編集部 ポジション……。場が人を育てるということでしょうか?
森本 そうですね。現状を認識して、社員は自分たちの足りないところをいかに早く埋めようかという努力をしています。「役員になったから終わり」とか、「50代だから今までの経験でこのくらいでいいや」という考えではありません。
成長はいくつになっても、どのポジションになっても続けていくというスタンスが向上心や成長志向を生み出し、結果として会社の業績も良くなっているようです。目の前の社員が持つ能力の120〜130%のポジションやミッションを与える。そこが伸びていく要素だと思います。
編集部 お話を聞いていて、森本さんご自身の生き方がまさにそうなのかなと感じます。
森本 そうですね。私自身、仕事に育児にアクセル全開で走り続けてきました。新人の頃には、朝7時に出社して新規アポ取りの電話営業。企業訪問の合間にも、電話ボックスにこもって汗だくで電話をかけ続けていたら警察に職務質問されたなんてこともあったほど、がむしゃらに走り続けてきました。産休からの復帰後も時短勤務制度を活用しつつ、効率的に時間を使えるよう「朝3時起き」を習慣化しました。
こんな仕事や生活スタイルは息切れしそうと感じる人もいらっしゃるかもしれません。けれど私は、毎日少し背伸びをして自分が成長している実感ができる、こんな日々が楽しくて仕方ありません。朝目覚めた瞬間から「仕事をしたい!」「お客さまのところに早く行きたい!」とワクワクしています。
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