トンネルだらけの沖縄新鉄道案は魅力に乏しい:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
「沖縄本島鉄道計画」が実現に向けて動き出した。沖縄県が実現性を高めるべく検討した結果を発表した。沖縄県民と世界の鉄道ファンが待望する鉄道だ。しかし、内容を見ると、目論見どおりの観光輸送は期待できない。
政府の鉄道設置案と沖縄県の評価
2005年(平成17年)12月。政府与党の沖縄振興政策案の目玉として、那覇―名護間の鉄道建設案が出された。他に那覇空港の滑走路増設案などもあり、鉄道は沖縄県北部の観光支援という名目だった。同案は翌年に政府の政策として発表されたものの具体案はなかった。
次の動きは2009年だ。政府は2010年の予算に沖縄縦貫鉄道の調査費として3000万円を計上している。このときは、鉄道だけではなくLRT(次世代型路面電車システム)案も検討している。その背景には2006年に開業した富山ライトレールの成功や、LRT建設は半額が補助金で、事業会社にとって負担が小さいという制度がある。
2010年7月、沖縄県は那覇―名護間に構想されている鉄道について、事業化は難しいとの見解を示した。鉄道の収益だけではなく、渋滞緩和など50年間の広範囲な費用対効果を試算したという。ただし、この案は都市部を地下鉄にするなど建設費を高めに見積もっている。この結果を受けて、共同通信社などが沖縄県知事と全41市町村にアンケートを取ったところ、7割が「沖縄本島で鉄道や次世代型路面電車(LRT)を導入すべきだ」と考えていると回答した。
その後、政府は沖縄県全体を網羅する鉄道建設について、政府が需要予測を調査し、2011年6月に結果を発表した。当時の沖縄タイムスの解説によると、普通鉄道は糸満市〜那覇市〜うるま市〜名護市を想定ルートとし、代替案として宜野湾市〜北谷町〜嘉手納町〜読谷村が検討された。このうち那覇〜うるま間の需要が高いとの結果だった。LRTの場合は県庁〜宜野湾市が最も高く、那覇〜豊見城〜糸満、沖縄市〜うるま市も有力だった。
需要はある。では採算性はどうか。その1年後、2012年6月の内閣府の発表によると、沖縄県に導入を目指す第3セクター鉄道計画では、検討している10タイプのルートすべてが赤字になる見込みだった。ただし、このプランは「都市部をLRTで、郊外は普通鉄道で運行し、直通運転を実施する」という、トラムトレインの考え方であった。
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