なぜメジャーリーガーは「クスリ」がやめられないのか?:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)
メジャーリーグに再びドーピング疑惑が起きている。Aロッドら主力級の選手が禁止薬物の提供を受けていたというのだ。彼らはなぜ「クスリ」に手を出してしまうのか?
断ち切れぬ「メジャーリーガー」と「クスリ」の関係性
ロドリゲスらの疑惑浮上は依然として「メジャーリーガー」と「クスリ」の関係性が強いことを証明してしまった。実際にMLBは過去、この「クスリ」において2度の激震に見舞われている。1度目は2003年の「バルコ・スキャンダル」。米国の栄養補助食品会社のバルコが多くのスポーツ選手に禁止薬物を提供していた事実が発覚し、同社の顧客リストにサンフランシスコ・ジャイアンツで通算762本塁打の世界記録をマークしたバリー・ボンズ氏ら複数の大物メジャーリーガーの名前が含まれていたことで米国では社会問題にまで発展した。
2度目は2007年の「ミッチェル・リポート」だ。MLBコミッショナーのバド・セリグ氏が元上院議員のジョージ・J・ミッチェル氏にメジャーリーグでの薬物使用の実態調査を依頼し、その報告書ではボンズ氏やロジャー・クレメンス氏(元ヤンキースなど)、アンディ・ペティット(ヤンキース)ら89人のプレーヤーが実名で挙げられた。
MLB側は長きに渡ってIOC(国際オリンピック委員会)が突き進める「アンチ・ドーピング」に煮えきれない態度を示していたが、くだんの「バルコ・スキャンダル」で薬物使用に対する世間の風当たりが厳しいことを痛感。2003年にようやく薬物検査を試験的に導入し、2004年から罰則を適用するようになったのは簡単にいえば、それが理由だった。それでもMLBに対する薬物批判がなかなか沈静化しなかったことから、セリグ氏は「ミッチェル・リポート」の作成に自ら踏み切って「MLBは薬物を許さない」と主張し、自浄能力があることを世間に証明しようとしたのである。
MLBでは2006年に薬物使用の罰則を強化し、現在は「1回目の違反で50試合、2回目で100試合の出場停止、3回目で永久追放」という「3ストライクルール」が徹底されている。さらに薬物の検査方法も厳格化され、今季からはレギュラーシーズン中でも尿検査だけでなく、HGHを摘発するために抜き打ちの血液検査が実施されるようになった。多くのMLB関係者が「われわれはクリーンになった」と胸を張っていた矢先に前出の「マイアミ・ショック」が明るみに出てしまったのだ。
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