壮大な“実験国家”米国から何を学べばいいのか:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(5)(4/4 ページ)
巨大化する企業と弱体化する国家。特に先進国では福祉が国家予算を圧迫し、どこも火のクルマだ。そんな中、本当に国がやるべき仕事とは何なのか。
米国は“実験国家”のままで
松井:国家がやるべきことはきちんとしたデザインでつくって、そうじゃないものは民営化する。米国のおかげで刑務所は国のほうがいいかなと分かってきました。
小飼:医療保険も政府のほうがいいのかなと。
松井:米国にはこのまま“実験国家”でいてもらおうかなと(笑)。それを参考にあるべき姿を導きだす。
小飼:実験をやってくれているので、エラいですよ。なんで米国にリーダーシップがあるのかというと、最初にこけてくれるから(笑)。
松井:なぜアップルのような会社が米国で生まれて、日本では生まれないのか。このような質問があったら、「環境の差」と答えます。米国ではチャレンジするだけでほめられる。チャレンジして失敗すると、“不浄なモノ”のようになってしまう国ではなかなか難しい。
小飼:その代わりに、うまくいって当たり前という価値観もあるわけです。例えば、電車の定時運行の正確さとか。
松井:日本のなにがいいかというと、正確さですよね。米国では不測の事態を想定しないといけない。日本にいると寛容さが失われて、5分遅れただけで腹が立つことも(苦笑)。
小飼:あるある。最近は、そこを携帯電話が少し和らげていますけどね。
(つづく)
プロフィール:
小飼弾(こがい・だん)
東京都出身。1991年12月米カリフォルニア州立大学バークレー校中退。その後帰国し、ネットワーク技術者として活躍。1996年ディーエイエヌを設立し、代表取締役に就任(現任)。1999年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の取締役に就任するも、2001年に同社取締役退任。著書に『小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)、『空気を読むな、本を読め。小飼弾の頭が強くなる読書法』(イースト・プレス)ほか。Twitterアカウントは「@dankogai」。
松井博(まつい・ひろし)
神奈川県出身。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。ブログ『まつひろのガレージライフ』が好評を博し、著書『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』(アスキー新書)を出版。Twitterアカウントは「@Matsuhiro」
関連記事
- アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 会社が大きくなって、手にしたモノ、失ったモノ
企業が巨大化している――。背景には「グローバル化に対応するため」といった狙いがあるのだが、こうした流れは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏とアップルで働いてきた松井博氏が語り合った。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.