学校へ行くメリットが説明できない時代:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(6)(1/5 ページ)
仕組みをつくる一握りの人が富を握り、中間層の仕事は急速に消えていく。そんな世界の中、果たして教育はどうあるべきなのか。ネット上に教材が溢れ、ちょっと検索すればたいていのことの答えが見つかる中で、大学が果たすべき役割とは……。
どこへ行く? 帝国化していく企業:
アップルやマクドナルド、グーグルなどのグローバル企業は、いまや落ち目になった国家を尻目にどんどん強大になっている。低税率国の子会社を使った租税回避を行っていたり、低賃金で労働者を搾取し、法律を自分の都合のいいように変えるなど、やりたい放題やっているように見える。
一方で、先進国の中間層は没落し、多くの人がグローバル化の名目のもと、時給で働く労働力として使われ始めている。民主主義はもはや機能していないのだろうか。人々が幸福になれる未来は来るのか。
書評を中心としたブログを運営しアルファブロガーとして知られる元技術者の小飼弾さんと、元アップル管理職の松井博さんが語り合った。全7回でお送りする。
→アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?(1)
→本記事、第6回
「仕組みを作る能力」は教育できるのか
松井:『小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)を読ませていただきました。僕はさんざん仕組みづくりをやってきたので、非常に面白かったです。ただね、この本を読んでも、多くの読者は内容をよく理解できないのではないかと思いました。というのも、ほとんどの人は仕組みをつくった経験がないし、仕組みの作り方を学習する機会もないですよね。「便利そう。でもオレはどうやっていいか、分からない」となってしまうのではないでしょうか。
小飼:他人を「働かせる」という経験がないんですよね。
松井:仕組みづくりって、学校では教えてくれません。日本の学校は人との距離を測るとか、言われたことをやるとか、そういうことしか学校で教えてくれない。もし“企業帝国(国境を気にせず自らの利益を追い求める企業)”で出世したければ、仕組みづくりができないとダメなんですよ。
小飼:「仕組みの主になれ」ということですね。人を奴隷として搾取するのは人倫にもとるけど、コンピュータならいいわけですし。
松井:人を使うにしても「どういう仕掛けをつくってどう使うのがいいか」というデザインをしなければいけません。そういうところがないがしろにされすぎています。教育すべきはたぶんそこなのに……。
小飼:しかし教育でできるのでしょうか。こう言ってはなんですが、「検索して分かること」というのは、もはやすでにお金を払うような教育ではないんです。覚えている必要性がないですから。
松井:そう、見たいときにまたググればいいわけですからね。僕は「仕組みが大事だよ」っていろんなところで言ってきましたが、「仕組みをつくる」ことをどうやったら教育できるのか、よく分からないんです。国がやるべきなのか、それとも企業がやるほうがいいのか。
一方、ネットで検索して自分で自分を教育する人がいっぱいいるわけで。後進国ではそうした人が増えてきました。
関連記事
- アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 会社が大きくなって、手にしたモノ、失ったモノ
企業が巨大化している――。背景には「グローバル化に対応するため」といった狙いがあるのだが、こうした流れは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏とアップルで働いてきた松井博氏が語り合った。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.