学校へ行くメリットが説明できない時代:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(6)(2/5 ページ)
仕組みをつくる一握りの人が富を握り、中間層の仕事は急速に消えていく。そんな世界の中、果たして教育はどうあるべきなのか。ネット上に教材が溢れ、ちょっと検索すればたいていのことの答えが見つかる中で、大学が果たすべき役割とは……。
小飼:海外に住んだことがないのに、英語が流ちょうな子どもがたくさんいます。なぜたくさんいるのかと聞いたところ「YouTubeで習った」というんです。だから素材はタダだと思っている。それをどうやってまとめるかがデザインそのものですね。
松井:いろいろ工夫すれば面白いんだけどね。粘土やブロックを使って何かをつくるのと、同じようなことなのに。
小飼:でも学校ではそこを組み合わせようとはしないんです。理由は、生徒を採点しなくてはいけないから。教育現場では上から降ってくるものを丸のみするしかなくて、「どれだけ上手に丸のみできたか」というのが点数の高さにつながってくる。
松井:自分で工夫できる子どもって、友だちと競い合って勝手にうまくなっているだけ。
小飼:そうなんです。テストの点数がいい子はいいゲームプレイヤーになれるかもしれないけど、ゲームメーカーにはなれない。ゲームメーカーになって初めてそのゲームに対して報酬が支払われるのにね。ものすごい人気のあるゲームの場合はトッププレイヤーがプロとして成立するかもしれないけど、そんなのはほんの一握りですからね。
松井:「シムシティ」(都市開発シミュレーションゲーム)みたいなゲームを進化させて、デザイン自体をゲームにするというのはどうでしょう? ワークフローのデザインとか。思いがけないやり方があるかもしれません。
小飼:仕事もゲームも一緒ですよね。「社畜だ」といっても、本人が面白ければ、他人から文句言われる筋合いはないんです。そういう仕事を辞められないという問題もありますが……。
松井:なぜ辞められないかというと、外を知らないからではないでしょうか。選択肢はいっぱいあるんだけどなあ。
小飼:そういった意味で、一番いい教育というのは「ただ外に出す」ではないでしょうか。子どもを学校にひとまとめにしておくというのが、よくない。
松井:そう、学校って、多様性がないからね。
関連記事
- アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 会社が大きくなって、手にしたモノ、失ったモノ
企業が巨大化している――。背景には「グローバル化に対応するため」といった狙いがあるのだが、こうした流れは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏とアップルで働いてきた松井博氏が語り合った。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.