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江戸時代から続く、“隠されていると見たくなる”商法とは?:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
紙パック飲料の飲み口を開くと、マンガ「テルマエ・ロマエ」が無料で読める――。これは明治とエンターブレインが展開しているキャンペーンだが、「隠されていると見たくなる」商法というのは、かなり古くから行われている。その商法とは……。
私たちは「見ている」のではなく、「見させられている」
にもかかわらず、なぜ「有害図書=犯罪誘発」なんて構図があたかも常識のようになっているのか。実はそれは「宮崎勤」(東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の容疑者として逮捕され、2008年に刑死した)の影響が大きい。逮捕前、彼の部屋にマスコミが入った時、ビデオテープやわいせつな雑誌が山積みにされている映像が日本中に流れた。あれで多くの日本人は思った。
こういう本ばかりを読んでいたからか――。
だが、これは事実ではない。この時、現場にいた先輩記者から実際に聞いたのだが、彼の部屋にはそれほどわいせつな雑誌はなかった。それを某テレビ局のクルーが“絵”にならないとかき集めて山を築き、中でもキャッチーな「若奥様の生下着」というエロ本を一番上に置いて撮影したらしい。
浮世絵研究家の白倉敬彦氏によると、「春画」のなかで、全裸になっていないものが多いのは、実は版元が呉服屋とタイアップしており、最新の着物を“宣伝”する意味もあったらしい。つまり、これも「隠されていると見たくなる」という心理を巧みについたプロモーションだったというわけだ。
江戸時代からこんな調子だ。私たちは「見ている」と思っているけれど、実はほとんどが、「見させられている」と思ったほうがいい。
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