なぜ「グローバル」と聞いて、不安を感じるのか:仕事をしたら“なんちゃってグローバル君”がいた(2)(3/6 ページ)
「グローバル」という言葉をメディアで目にしない日はない。変化のスピードが速い時代に、私たちはどのように対応すればいいのだろうか。海外で活躍してきた、田村耕太郎氏に話を聞いた。
いろいろなことを考えて、決断せよ
土肥:アフリカに残った人類も、リスクがあったと思うんですよ。このまま残ってもエサが足りるか分からない、といった不安を感じていたかもしれません。「海外で働きたくない」という人は、「アフリカに残る」と選択した人たちと考え方が似ているのかもしれませんね。
田村:日本の人口は減っていきます。減少することをチャンスととらえる人もいれば、ピンチととらえる人もいます。アジアの新興国は今後も人口が増えていくと言われているので、そうした国に出ていくのもひとつの手ですが、日本の人口は100年後に約4000万人と予測されています。その数字を、どうとらえるべきか。ここはハッキリさせたほうがいいですね。若い人がたくさんいる国でエサを獲りに行くのか、それともお年寄りがたくさんいる日本に残って勝負するのか。全員がグローバル化の中で戦う必要はありませんし、自分の適性や好み、将来計画などを考えて、決断すればいいのではないでしょうか。
土肥:意外ですねえ。田村さんといえば「海外に出よ」のイメージが強いので。
田村:もちろん海外に出たほうがいいですよ。海外で暮らせとか働けとかではなく、“一度は見たほうがいい”という意味ですね。実際に行ってみて、その国が合わなかったら日本に戻ってくればいいだけのこと。日本を出ることによって、日本の力が見えてくると思います。日本の将来を悲観する人が多いのですが、これだけ豊かになって高齢化社会を迎える国は、歴史上ほとんどありません。なので日本のどこかにチャンスがあるはず。それを知る意味でも、海外に行ったほうがいいですね。
人口増と経済成長率の数字だけを見て、アジアに進出する企業が多いですが、その選択が正しいかどうか分かりません。というのも、これからの新興国はリスクが高まると思うから。
土肥:どういったリスクが高まるのでしょうか?
田村:政治や社会保障制度がそれほど成熟していないのに、国民は過度な期待をしているので、政府にさまざまな要求を出しています。例えば、トルコ、ブラジル、ロシア、エジプトといった国ではデモが起きていますよね。国民の期待に応えられていない国は、まだまだたくさんあります。なので人口が減っている、経済成長率は期待できない……といった理由で「日本に将来はない。アジアは期待できる」という見方には疑問を感じますね。政治リスクや社会の成熟度などを指標に入れて、行動すべきではないでしょうか。
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