「狭い都心マンション」と「広い郊外マンション」――どっちが得?(2/2 ページ)
マンションの購入を検討するとき、あなたはどちらを選びますか? 少し狭くても都心の利便性の高い物件ですか? それとも、郊外の広くて比較的安い物件でしょうか? 実はマンションを「資産」という視点から考えた場合、重要なのはやはり立地なのです。
10年後の売却時に“運命”が分れる
しかし、この2つのパターンを「資産性」の視点から見るとどうでしょうか? 例えば、10年後に何らかの理由でマンションを売却せざるを得なくなった場合、大きく運命が分かれます。
10年前に4480万円で購入した、都心の人気沿線の駅から徒歩4分の53.6平方メートル・2LDKマンションは、売却時には4580万円で売れたのに対し、10年前に3980万円で購入した郊外の81.7平方メートル・3〜4LDKのマンションは、売却時には2100万円になってしまうことがあります。
このときに売却する場合の価格が半分近くになってしまうことを知るので、仕方なく賃貸に出すことを検討して周辺賃料を調査すると、今度は貸せる賃料が住宅ローン返済額を下回ってしまうという現実を目の当たりにします。住宅ローン返済額のほかに、マンションには毎月の管理費や修繕積立金、インターネット使用料などや固定資産税、都市計画税などがかかるので、それらを合わせて支払うと、相当なマイナスになってしまいます。
都心のマンションに比べ、郊外のマンションは購入時の価格は安いことが多いものの、価格が下がる可能性が高い。
現在の日本では都市部への人口集中がますます進み、一部を除いて、地方や郊外は人口が減少しており、都心部と地方や郊外の格差が拡大しています。
また、都心部の中でも二極化が進んでおり、人が集まり活気に満ちて住宅価格が上昇するエリアがある一方、事業所の撤退や閉鎖、若年層の流出などから人口が減少、街が高齢化し価格が下落しているエリアも出てきています。
実際、築年が古く価格設定が高めでも売却に出したと同時に購入希望者が殺到するマンションと、築浅できれいで価格が低めに設定されていてもなかなか購入希望者があらわれないマンションが存在します。
東日本大震災のとき、勤めている会社から自宅までの実際の距離(電車の乗車時間ではありません)が遠いために帰宅が困難になったいわゆる「帰宅難民」が発生したことや、今後のさらなる高齢化に伴い、郊外に住んでいて定年を迎える年代の世帯が老後を見越して、生活の便利さや安心を求めて都心へ移住する傾向が高まっています。
これにより「都心回帰」「職住近接」などの流れが進み、今後、ますます都心のマンションの資産価値は高まっていく一方、都心から離れたマンションほど資産価値が下がりやすくなっていく可能性があると思われます。
マンションを初めて購入する方が陥りやすい思考パターン
マンションを初めて購入しようと考える人が陥りやすい思考パターンは、
「賃貸マンションの家賃は意外と高いし、もったいない。よし、結婚を機にマンションを購入しよう」
「今は夫婦2人だけど、将来、子どもができて大きくなったときに備え、3LDK、できれば4LDKは必要だ」
「ところで、自分たちはいくらくらいのマンションが買えるのだろう?」
「自分たちが買える、希望にかなう3〜4LDKのマンションがあるのはこのエリアだ」「これからの時代は、経済も不透明だし地震も心配。住宅ローンの支払いは不安だ。無理するのは危険なので、堅実に無理のない返済計画が必要。支払いは月々○○万円までだ」
「通勤の便がよく災害にも強そうなエリアの3〜4LDKの都心マンションは価格が高くて手が出ない。また、交通が便利でも地震や水害などが起きたときに不安なエリアは心配だ。一方、災害に強そうな郊外のマンションなら、多少交通の便が悪くても安全そうだし、住環境も良さそうで十分な広さと価格も手ごろだから、まあよいだろう」
「都心のマンションには憧れるけどやっぱり自分達には分不相応だし、子どもができたときのことを考えた十分な広さのものはそもそも買えない。それに、将来生まれる子どもたちは緑が多い環境で伸び伸びと育てたい」
と、このような感じです。
しかし、資産性という視点から見た場合、マンションの価値は立地の影響が想像以上に大きく、「価格が落ちにくいマンション」とは「都心で交通の便がよいマンション」が多いのです。
売却に備えて都心のマンションを選ぶのと、売却を想定せずに「一生住むつもり」と郊外のマンションを選ぶのとでは、マンションという不動産を「資産」ととらえるか「消費」ととらえるかで、大きな差が出てしまうこともあるのです。
もちろん、緑が多いなど環境の良いエリアに建つ、専有面積の広い比較的価格の安い郊外のマンションは、交通や買物、教育や医療の体制など、都心ほどの利便性を考えなければ魅力的です。
しかし、郊外のマンションが都心のに比べて安いとはいえ、やはり高額な買物です。長い人生ではいろいろなことが起き、突然ライフステージの変化が訪れる場面に出くわすこともあるでしょう。
「資産価値」を意識し、もしものときに備えて購入するということは、ライフステージの変化に応じて必要となればすぐに売却することができるということです。つまり、いつマンションをお金に換えても、ある程度の金額にはなるので安心していられるということでもあります。住宅ローンを背負っているというストレスからも、そういう意味では多少解放されて精神衛生上もプラスになるのではないかと思います。
消費してしまってもよいから希望を満たすマンションを手に入れたいという人ならともかく、資産性の視点からも、やはり資産になるマンションを購入するという考え方が大切と言えるでしょう。(後藤一仁)
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