なぜ日本のプロレスはつまらなくなったのか?:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)
再び、全日本プロレスが分裂した。きっかけは新たに就任したオーナーによる「ヤラセ」発言だった。プロレス業界は離れてしまったファンを取り戻すために、何をすべきなのか?
「打倒・グレイシー」に走ったプロレス業界
この関係者が口にした「総合の呪縛」とは何か――。ちなみに総合とは総合格闘技の略称。打投極の攻撃を駆使しながら勝敗を決するのが、そのルールだ。米国のズッファ社が母体となって運営される「UFC」が現在、総合格闘技(米国での呼称は「MMA」)の大会として世界的な人気を確立。日本でも大小さまざまな総合格闘技の大会が催され、多くのファンが存在している。
こうした真剣勝負の世界に、ショービジネスを主戦場にしていたプロレスラーたちが無謀にも次々と飛び込んでいき惨敗を繰り返してしまった時代があった。これが、「呪縛」の発端である。
かつて日本でも「PRIDE」という総合格闘技の大会が定期的に行われていたのは、まだ多くの人の記憶に残っているかと思う。フジテレビ系列の地上波でも放送され、一大ムーブメントを巻き起こした同大会。PRIDEでは主催者やスポンサーサイドの思惑も絡んでプロレス的な「ブック(八百長)」が数試合行われていたことが後に関係者の証言によって明らかになっているが、基本的には大半が真剣勝負であった。
まだ大会が創世記のころ。「グレイシー柔術」の使い手で総合格闘技ルールの試合でも無敗を誇ったヒクソン・グレイシーに元UWFインターナショナル(Uインター)の人気レスラー・高田延彦が成す術もなく2度も敗れた(1997年10月の「PRIDE1」と1998年10月の「PRIDE4」)のは、プロレスファンに大きな衝撃と落胆を与えた。
日本で行われたPRIDE以外の大会でも、プロレスラーと総合格闘家の対決が幾度となく組まれた。これは知名度の高い人気レスラーとのマッチメイクを行えば大きな注目を集め、集客増加とスポンサー収入の大幅アップが比較的狙いやすかったからである。
加えてヒクソンに日本のトップレスラーだった高田が連敗したことで日本のプロレス界やプロレスファンの間には「打倒・グレイシー」や「総合でのリベンジ」を果たしてほしいと願うムードが高まっていたことも、プロレスラーの総合格闘技界への参戦に拍車をかけた。
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